2019 Fiscal Year Research-status Report
障害女性をめぐる差別構造への「交差性」概念を用いたアプローチ
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16K04114
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
土屋 葉 愛知大学, 文学部, 教授 (60339538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
時岡 新 金城学院大学, 国際情報学部, 教授 (30387592)
渡辺 克典 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 准教授 (60509181)
後藤 悠里 福山市立大学, その他部局等(英語特任), 特任教員 (70750199)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 障害 / 女性 / 生きづらさ / 差別 / 障害女性 / 発達障害 / 吃音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は第一に、障害のある女性がこれまでの人生において経験してきた「 生きづらさ」を描き出すこと、第二に「差別」に抵抗する、障害女性による生存のための戦略を明らかにすることである。すなわち、本研究は、障害女性への体系的なエンパワメントモデルを構築するための、基礎的研究に資することをめざしている。 2019年度前半は上記の目的のもと、前年度より実施してきた身体障害(肢体不自由、難病、聴覚障害、視覚障害)のある女性、精神障害のある女性、知的障害のある女性および支援者らへの聴きとり調査に加えて、発達障害のある女性、吃音のある女性への調査、およびフォローアップ調査として精神障害のある女性への調査を行った。 発達障害のある女性への聴きとり調査から得られたデータから、女性規範との関連で考察した結果をもとに学会報告を行った。彼女らが「頑張り」や「緊張」を強いられ、ライフステージの初期から長期にわたって「疲れ」を抱え続けていること、それらはジェンダー規範への応答・同調圧力とともに日常/社会生活を困難にしていることを指摘した。 また、精神障害のある女性の、生きづらさと自助会に関する語りから、自助会が「専門的知識」の提供と、生きづらさを共有する仲間との「人間関係」を形成する場になりうるが、女性役割期待に関わる生きづらさについて、自助会は十分に機能していないことを考察し、学会にて報告を行った。 2019年9月から2020年3月まで、研究代表者が休暇を取得したことにより、当初計画の遅延および変更が生じた。したがって、各年度に行った調査の最終的な分析および考察は翌年に持ち越された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度は研究代表者が休暇を取得したこと、および年度末より生じた分担者の研究機関異動や新型コロナウィルスの影響等により、当初計画の遅延および変更が生じた。事例検討の研究会を開催することができず、インタビューデータおよび事前質問紙調査から得られたデータの分析・考察が十分に行えていない。このため、まとまった知見を公表することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度度前半は、各年度に行った調査の最終的な分析および考察を行うための、研究会を開催する。また、障害女性へのエンパワメントの方策を考え、エンパワメントモデルを構築するために、関係者を招聘しての研究会も合わせて開催する。この際、対象者のプライバシー保護には最大限の注意を払う。 年代、障害種別のバランスを考慮して対象者を選定する追加調査を実施すると同時に、1人の対象者について 複数回の追加調査を行うことにより、多次元的な要因が絡み合っている障害女性の「生きづらさ」を「分厚い記述」によって描き出すことをめざす。とくに1回目の調査時から、転職や結婚・出産・入院等で生活の変化が大きかった対象者や、大きな出来事を経験した対象者に再度アプローチすることにより、考察を深めていく。 2020年度中期には、得られた知見を整理し学会誌・商業誌への投稿を行う。最終的には、4年間の成果をまとめた報告書(アクセシビリティの観点からweb上での公開を前提とする)を作成する。この際、対象者のプライバシー保護には最大限の注意を払う。 障害女性の差別事例を収集し分析を行う本研究の結果の公表は、社会的要請が高いことから広く社会に情報提供を行うために、行政関係者や一般市民にも開かれたかたちでの研究会や研究報告会の開催をめざす。状況によってはオンラインでの開催を検討する。
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Causes of Carryover |
聴きとり調査について、当初目標としていた人数に届いていないために次年度使用額が生じている。次年度に追加調査を実施し、謝金、文字起こし費用として使用する予定である。またオブザーバーを招いた研究会の開催、学会報告、成果報告に付随して生じる諸費用にも使用する。
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Research Products
(9 results)