2016 Fiscal Year Research-status Report
日本における女性/家族の居所不安定層の実態と支援課題について
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16K04191
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
川原 恵子 東洋大学, 社会学部, 講師 (70348308)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホームレス / 居所不安定 / 女性 / ジェンダー / 婦人保護 / 生活困窮者自立支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究プロジェクトのうち、1 欧米のホームレス研究の蒐集とレビュー、2 実態把握のためのサーベイを実施するためのPilot調査、3 その他(支援実態把握のためのヒアリングなど)を行った。 1 欧米のホームレス研究の蒐集とレビュー;EUでホームレス問題に関して中心的に活躍しているNGO組織;FEANTSAの資料(European Journal on Homelessness等)を中心に収集し、分析を行った。そこから明らかになったのは、以下の3点である。(1)ヨーロッパにおいても国際比較研究では定義の問題が横たわっている。(2)クロスセクショナル調査では、慢性的長期層が多く把握される(その多数が男性)という特徴があるため、女性の割合が低くなる。ホームレスの実態を的確に把握するには、クロスセクショナル調査と縦断調査をそれぞれ実施するリサーチの展開が必要。(3)ホームレス対策の歴史的経緯からクロスセクショナル調査や一部のドヤ街への潜入調査等で男性が多く把握され、ホームレス=男性というイメージが構築されてきたという実態が存在する。過剰労働人口(居所不安定な貧困層)をいかに管理してきたか、その管理過程の中での把握の方法とそれに対して居所不安定な女性の存在が無視されてきたという現状がある。 2 実態把握のためのサーベイを実施するためのPilot調査;生活保護施設の退所者で調査協力の申し出があった方に実施(5名)。 3 その他;日本の女性ホームレス・若年ホームレスの支援実態を把握するため、居所不安定な女性や若年層の支援を行っている団体について数か所ヒアリングを実施した。また、研究会を数回開催し、同じ対象を研究する研究者との意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1 海外文献の読み込みと課題整理について。女性ホームレス研究に関する資料については、成果にも記した通り、主にFEANTSAの研究資料を中心に蒐集し分析を行ってきたが、重要な図書資料が2016年に出版され(Mayock et al2016)、それをようやく入手出来たという段階である。FEANTSAで示されている研究知見以外でも有用な論点が提示されているため、今後当該図書の参照資料を用いて収集を継続・分析整理して行く予定である。なお、国際的なホームレス研究においては、欧州に限らず北米のホームレス研究も含めた国際比較研究が進んでいるため、国際比較研究資料も幅広く収集していく必要があることを改めて認識した。 2 実態調査のためのPilot調査については、当初の予想よりも調査協力の申し出者が少なく、調査期間を延長して実施した。このため28年度は分析までは進めなかった。特に同じ対象者に繰り返し調査を実施する縦断調査を予定しているため、実際の実態調査に取り掛かるにはもう少し丁寧な結果の分析をする必要があり、仮説生成や論点整理を丁寧に行ったうえで調査計画を立てる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)海外の女性ホームレスに関する研究レビューを踏まえて、日本の女性ホームレスに関する政策的対応の課題について論文にまとめ、公表する。この論文については、英語での発表を予定しているため、英語翻訳・英文校正等業者委託を予定している。また、研究会を複数回開催し、社会福祉にとどまらず、多様な支援団体や他の専門家から、本研究課題について、幅広く意見・助言を得られるようにしていく。 (2)実態把握のためのサーベイを平成30年度に実施するための事前準備を行う。Pilot調査の分析を踏まえて、仮説生成と調査計画を立てる。Pilot調査については、平成28年度に第1回目の調査を終えているが、縦断調査になるように、半年から1年程度の間を開けて継続して第2回目の調査を実施する。欧米の女性ホームレス研究と比較できるような調査項目を検討していく。実態調査のための事前準備としては、協力を依頼する支援団体との関係をより深く構築するため、調査の依頼をあらためて行うだけでなく、調査計画にも現場の意見や視点を取り入れるために複数回の打ち合わせを実施する。
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Causes of Carryover |
1 実態調査のためのPilot調査の協力者の申し出が予定より少なく、それに付随する業者への業務委託等(テープ起こし等)の実施が当初の予定よりも少なくなった。 2 支援団体等へのヒアリング(北九州・福岡)を行ったが、年度末での実施となったため、交通費等の支出が次年度での清算となった。 3 28年度に予定していた設備備品および研究図書(洋書)の購入が遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由に記した通り、実施は28年度であったが、一部の支出は29年度での支払いとなった(旅費、業務委託費、図書資料等)。また、28年度に調達予定だった設備備品および研究図書資料(洋書・データベース)については、29年度に購入する。
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