2019 Fiscal Year Research-status Report
日本における女性/家族の居所不安定層の実態と支援課題について
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16K04191
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
川原 恵子 東洋大学, 社会学部, 講師 (70348308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 木綿子 東洋大学, 社会学部, 教授 (60339207)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ホームレス対策 / 女性ホームレス / 婦人保護事業 / 広義のホームレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本における居所を喪失するような不安定な居住状態(広義のホームレス状態)の女性や家族の実態とその支援課題を探ることである。これまで、調査や先行研究のレビューから、他の先進諸国では「ホームレス」対策として若者や家族等の多様な主体が「単身者(男性)」と並行して把捉されているのに対して、日本では主に「男性(特に単身男性)」だけが「ホームレス」対策の対象となっていること、女性や家族は「ホームレス」対策以外の施策(枠組み)によって対応されていることが明らかになった。また、世界的にホームレス対策(手法)の潮流が「Housing First」に移行しつつある中、日本では少なくとも政策レベルでは議論が進んでいない。今年度は、そのような「ホームレス」対応が日本特有の形態なのか、それともアジア的価値規範(男尊女卑や家族主義等)を背景とするものなのかを探るため、韓国のホームレス対策を例として現地調査を実施した。また、広義の女性ホームレスを含む女性の支援施策である「婦人保護事業」の見直しが進められているため、日本の女性ホームレス問題がどのような文脈で整理されていくのかを注視してきた。 結果:韓国では、野宿状態の人と「ホームレス施設の利用者」を合わせて「ホームレス」として捉えているため、野宿としては出現しにくい女性や家族も「ホームレス」として把握されていることが明らかになった。また日本ではDVシェルター等が「広義のホームレス」の受け皿となっておりDV被害者と共に保護されているが、韓国ではDV被害者対応とホームレス対策は明確に区別され、またHousing First的な取組も行われており、日本のホームレス対応の特異性が示唆された。他方で女性ホームレスの共通点等も確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、最終年度として研究をまとめていく予定であったが、英豪の女性ホームレス研究者と交流する機会があり、ディスカッションの中で日本の女性ホームレスとその福祉対応が、日本特有のものなのか、それともアジア的文化を背景とするものなのか疑問を持つに至った。本研究において、その視点が重要であると判断し、韓国のホームレス対策の検討を研究課題の一つに加えるという、計画の一部変更を行った。このため、やや遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度として、以下の3点をまとめ、日本における女性ホームレスの実態と支援課題を考察し、報告書を作成する。 (1)2018年度に実施した女性福祉施設利用者調査のデータを分析し結果をまとめる、(2)同調査データと生活保護更生施設利用者(男性)データを比較することにより、性別による支援課題の違いを整理し検討する、(3)2019年度の韓国の女性ホームレスの視察結果、以上3点の研究結果を踏まえた考察。
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Causes of Carryover |
2019年度は当初予定では最終年度であり、研究成果を報告書として作成することを予定していたが、研究の一部変更を行い、2019年度は韓国視察を実施した。このため研究成果のまとめである、報告書作成は2020年度に実施する。 報告書をまとめるために、韓国視察のヒアリングのテープ起こし及び翻訳、資料の翻訳等に関して業務委託を依頼予定。 また2018年度の女性福祉施設調査の分析結果の表作成にあたりアルバイト又は業者委託を予定している。
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Research Products
(1 results)