2017 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の学習・教育プログラムのタイプ別比較と実践モデルの提示
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16K04203
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
木下 康仁 立教大学, 社会学部, 教授 (30257159)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高齢者 / シニア / 学び / 学習 / 教育 / 第三期大学 / U3A / 定年後ライフスタイル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、都市部の高齢者、特に定年退職後のシニアを主たる対象に、仲間との学びの経験が定年後長くなった人生におけるライフスタイルの創出に果たす可能性をプログラムのタイプ別に検討し、実践モデルの提案を目的に実施しており、これをシニア参加型のアクションリサーチとして進めている。 平成29年度は3年計画の中間年度に当たり、本研究の特徴であるシニアの協力者たちの参加形態を継続して進めた。1名の新規追加により6名のチームで各担当を決め月例の会議で検討してきた。当該年度は主要なタイプである大学併設型と市民大学型の学習プログラムについて重点的な検討を行った。前者では、事例として立教大学が開設している立教セカンドステージ大学と東京農業大学が開設している農大グリーンアカデミーを取り上げ、当事者の参加経験を踏まえ実態、可能性、課題等について比較検討を行った。また、市民大学型ではかわさき市民アカデミーとなかの生涯学習大学を取り上げ、同様の検討を進めた。 研究成果として、平成30年2月に『シニア 学びの群像:定年後ライフスタイルの創出』(弘文堂)を出版した。同書では本研究の理論枠組みを一般読者が理解しやすいように解説し、ナラティブ・アプローチの手法により当事者の語りを中心にまとめた。また、代表者が実施した大学学部生とシニアの共学についてのエスノグラフィーを含むものである。加えて、前年度実施のイギリスにおけるUniversity of the Third Age(第三期大学)の調査結果もエスノグラフィーの記述により収録した。 もう一つの研究成果は、イギリス以外の地域におけるシニアの学びに関する国際動向を分析し、「国境を越えるシニアの学び:University of the Third Age運動の国際展開」と題する論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
総合的には、おおむね順調と考えている。 シニア対象の主要な学習プログラムである既存の大学の開設している大学併設型と自治体主導による市民大学型に関する研究が予想以上に進展し、その結果、成果を一般公開する機会として単行本の出版ができた。特に本研究の目的であるシニア層が理解しやすいよう当事者の経験を語りを中心に分析をまとめることができた。平成29年度は、特に後半であるが、同書の完成に向けた作業が中心となった。 本研究の特徴であるシニアの参加による遂行態勢は機能してきており、参加6名にとってこの研究プロジェクトでの経験がもうひとつの学びのプロセスともなってきており、シニアの学びの可能性の具体例に発展してきている。これも予想外の成果となっている。 一方、当該年度終わりに予定していた国際シンポジウムは予定していた参加者の都合がつかず、代表者の都合も重なり年度内の開催ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は最終年度であり、先行している大学併設型と市民大学型の研究だけでなく他のタイプ(大学正規入学型、高齢者居住施設型:CCRC/Continuing Care Retirement Community)などについて調査を進め、シニアの学びの経験の多様性とその受け皿である学習プログラムの特性についてまとめる。前年度の成果である書籍で提案した内容を説明、報告する機会を作り、提案内容への反応をみることで、問題の捉え方、具体的な可能性などについて検討し最終報告に活かしていく。 また、当初の計画に戻る形になるが本研究プロジェクトの成果を発表する機会として、シニア当事者の参加による国際シンポジウムの開催を予定している。
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Causes of Carryover |
前年度末に予定していた国際シンポジウムの開催が招聘予定の参加者の都合で調整困難となり平成30年度に延びたことによる。関連して、その準備として予定していた海外出張が代表者の都合により実施できなかった。 また、研究成果の単行本出版の可能性が年度初めに具体化したことにより、それまでの成果を取りまとめる作業を優先させたためフィールド調査が当初予定よりも少なくなった。 平成30年度はシンポジウムを年度末ではなく、時期的に余裕を見て年度後半に開催する方向で具体化する。そのための事前準備やゲストの招聘のための旅費等に使用する。また、国内のフィールド調査は年度前半に重点的に行うが、現地調査のための旅費や資料整理等の人件費を支出する予定である。
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Research Products
(2 results)