2016 Fiscal Year Research-status Report
介護従事者による高齢者虐待防止に関する研究‐参加型学習による教育プログラム開発‐
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16K04245
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Research Institution | Chubu Gakuin College |
Principal Investigator |
横山 さつき 中部学院大学短期大学部, 社会福祉学科, 教授 (90413236)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高齢者虐待 / 不適切ケア / 介護職員 / 職業性ストレス / ストレスマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
介護職員による高齢者虐待を含む不適切ケアの発生と職業性ストレス、専門的技量、職場の特性(教育状況、職場風土、労働条件)及び個人要因等との関連を明らかにし、介護職員による不適切ケアの発生・防止要因及びその対応法を介護サービス提供の観点から検討することを目的として、東海北陸ブロック7県の介護老人福祉施設と介護老人保健施設全数(1,715施設)の介護職員3,430名(各施設2名)を対象とした、126の設問から成る自記式質問紙調査を2016年5月に実施した。 その結果、介護老人保健施設で就労している者、夜間勤務のある者が不適切ケアを行っている程度が高かった。また、不適切ケアの発生に最も影響を及ぼしている因子は、「放棄・諦め」によるコーピング方略の多用であり、次いで、「対人関係」の悪さに起因するストレス刺激、「責任転嫁」によるコーピング方略の多用、「働きがい」のなさに起因するストレス刺激であり、それらが「脱人格化」を助長し不適切ケアに至る構図が示された。 したがって、不適切ケアを防止するためには、第1に職業性ストレスの問題の処理が望まれ、対象・場面に応じた多様なコーピングスキルやソーシャルスキル(対人関係知性)を身につけることを中心としたストレスマネジメント教育の充実が必須である。加えて、介護老人保健施設に勤務している者、夜間勤務のある者が不適切ケアを行っている程度が高かったという特徴を踏まえたリスクマネジメントが必要である。 これまでは多様で複合的な虐待を含む不適切ケアの発生要因が指摘されてきた。その流れの中で、本調査は介護職員のストレスへの対応が最も重要であることを示すものとなり、その具体的介入法を検討するために必要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、介護従事者による高齢者虐待を含む不適切ケアの実態と介護職独自の心理的ストレスを含む多面的な因子との関連を明らかにし、不適切行為の発生要因と防止要因及び対応法を探究することを目的とした。その目的を果たし、2016年11月20日開催の第17回人間福祉学会大会(岐阜大学:岐阜市柳戸1-1)で研究発表を行った。 また、本研究成果を踏まえたシンポジウム(テーマ:寄り添うケアの追求;不適切ケア防止に向けて、司会兼発題者:横山さつき、参加者:介護職員等120名)を2017年3月3日(金)の10:10~12:10に、中部学院大学・中部学院大学短期大学部(岐阜県関市桐ヶ丘2-1)において、4名の研究協力者の協力を得て実施し、問題提起をするとともにフォーカスグループによる学習会への参加を促した。現在、学習会参加者の募集をしている段階である。 さらに、2017年4月に本研究成果を原著論文としてまとめ、日本老年社会科学会誌「老年社会科学」に投稿した。現在、査読審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に計画に沿った研究を行うことができており、遂行上の課題はない。そのため、当初計画の通り研究を進める。 ただし、本研究には研究分担者及び連携研究者がいない。そのため、選任した4名の研究協力者との連携をこれまで以上に密にして行くことによって、平成29年度に計画している4回の参加型学習会の参加者確保と内容の充実を図っていく。 また、当初計画では、介護従事者の中から参加型学習会のモデレーター(参加者同士の自発的なディスカッションをリードする進行役)を4名選任することとしていたが、多様な視点からのアプローチが望ましいと考え、多方面で活躍中の医療・福祉の専門職員をモデレーターとして選任することとする。
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Causes of Carryover |
計画通りに支出したものの、交付決定額をオーバーしないよう調整したことによって1,091円の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度において予期しない消耗品が生じた。平成29年度においても同様のことが起こり得ると考えられる。 そのため、未支出の1,091円を平成29年度においての消耗品費(物品費)に加えることとする。
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Research Products
(1 results)