2016 Fiscal Year Research-status Report
集団間葛藤を乗り越えるための認知基盤としてのワーキングメモリキャパシティ
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16K04266
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
吉田 綾乃 東北福祉大学, 総合福祉学部, 准教授 (10367576)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 集団間葛藤 / ワーキングメモリキャパシティ / 内集団バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はワーキングメモリキャパシティ(WMC)が集団間葛藤の生起過程および解消過程に及ぼす影響について検討することである。本年度は生起過程に焦点をあて、2つの研究を行った。 ひとつ目の実験では、安全基地(secure base)プライミングが内集団バイアスを低下させるという先行研究に基づき、プライミング3(安全基地・お金・統制)×WMC 2(高・低)が、内集団成員と外集団成員に対する印象評定に及ぼす影響を検討した。分析の結果、安全基地プライミングは統制群よりもポジティブ感情を喚起することが示されたが、プライミングが内集団バイアスに及ぼす影響は確認されなかった。しかしながら、WMC低群は高群よりも内集団バイアスが強いことが明らかになった。 ふたつ目の実験では、通常は偏見や差別を示しやすい認知的完結欲求が高い個人が、内集団肯定化(in-group affirmation)を行うことにより、外集団を好ましく評価する傾向が生じるという研究知見を踏まえ、内集団肯定化2(長所・短所)×認知的完結欲求2(高・低)×WMC2(高・低)が外集団成員に対する好ましさに及ぼす影響について検討した。実験では、参加者が所属している内集団の長所を記述することにより、内集団肯定化の操作を行った。分析の結果、先行研究と一致して、内集団肯定化は認知的完結化欲求低群よりも高群において、外集団成員に対する肯定的評価と結びつくことが示された。さらに、その効果がWMC低群においてのみ認められることが明らかとなった。WMCが集団間葛藤の生起過程に関与していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はこれまでワーキングメモリキャパシティが集団間葛藤の生起過程について実証的な検討を行い、仮説を概ね支持する結果を得ている。全体として本研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はワーキングメモリキャパシティが集団間葛藤の生起過程ならびに解消過程について、心的プロセスを含めたより精緻な現象理解を行うことを目指している。
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Causes of Carryover |
研究の実施を迅速に進めるため、研究備品(図書)の購入を前倒ししたために生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入した備品(図書)については、3年間を通して研究実施において使用する。
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