2017 Fiscal Year Research-status Report
集団間葛藤を乗り越えるための認知基盤としてのワーキングメモリキャパシティ
Project/Area Number |
16K04266
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
吉田 綾乃 東北福祉大学, 総合福祉学部, 准教授 (10367576)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 集団間葛藤 / ワーキングメモリキャパシティ / 集団実体性 / 国家アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はワーキングメモリキャパシティ(WMC)が集団間葛藤の生起過程および解消過程に及ぼす影響について検討することである。これまでの研究から、外集団や外集団成員の行動について否定的に報じたメディアに接することが、外集団成員に対する否定的な態度形成や外集団成員への排斥行動を引き起こすことが示されている。メディアが報じる外集団に関する限定的かつ感情的な情報を処理する過程にWMCが関与していることが予想される。本年度はこれらの知見を踏まえ、メディアが報じた外集団脅威情報の処理にWMCが及ぼす影響、ならびに外集団脅威報道触後の外集団成員排斥にWMCが及ぼす影響について検討を行った。 主な知見は以下のようにまとめられる。まず、メディアが報じた外集団と日本の間に生じた否定的事象(慰安婦問題など)について、WMC低群は高群よりも自国にとって脅威であると評価する傾向があることが示された。また、WMCが乏しいほど外集団脅威報道接触後に国家アイデンティティ、とりわけ愛国心が高まることが確認された。さらに、愛国心の高まりは、否定的な集団間情動と集団実体性の認知を媒介して外集団成員排斥と結びつく可能性があることが明らかとなった。これらの結果は、WMCの個人差がメディアによって報じられる外集団に関する情報の処理過程に影響を及ぼしていることを示唆しており、WMCの観点から集団間葛藤の生起過程ならびに解消過程について検討することの重要性を示していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでに収集したデータに基づき学会発表を行った。また、現在は学術論文の執筆を進めており、ある程度成果の発信が順調に進んでいると言える。未発表ではあるが、外集団成員の集団実体性の高さを操作したシナリオを用いて、集団実体性の高さとWMCの個人差が、外集団成員の受け入れに及ぼす影響に関する実験も行っている。これらのデータについて現在分析を進めており、成果について発表することを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、以下のように進めることを計画している。まず、これまでに得た知見を踏まえて、今後の課題を再検討し、当初の研究目的と照らし合わせながら、さらに検討を行う必要がある課題を明らかにする。その上で、得られた知見を補強するための実験や調査を行う予定である。また、実験や調査と並行して、昨年度までに得た実証データについては、その内容を精査し、学会発表および論文としてまとめることを計画している。
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