2018 Fiscal Year Annual Research Report
Working memory capacity as a cognitive basis for overcoming intergroup conflict
Project/Area Number |
16K04266
|
Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
吉田 綾乃 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (10367576)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 集団間葛藤 / ワーキングメモリ / 存在脅威管理理論 / 社会的支配志向性 / 愛国心 / 感染症脅威 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ワーキングメモリキャパシティ(WMC)が集団間葛藤の生起過程および解消過程に及ぼす影響について検討を行うことである。H30年度は、外集団成員への嫌悪感情や差別につながる存在論的恐怖と感染脅威に着目し、2つの研究を行った。 存在脅威管理理論に基づいた研究の結果、存在論的恐怖が顕現化されると、「優秀な集団は上に立ち、他の集団を導くほうがよい」といった社会的支配志向性が高まること、この傾向は自文化が外集団から受容されているという情報に接すると抑制されることが示された。しかしながら、WMCは、情報接触による社会的支配志向性の抑制効果と関連していなかった。一方、存在論的恐怖が顕現化すると、WMC高群は低群よりも愛国心が高まることが示された。 これまでに、嫌悪感情の喚起は、病原体の感染を避けるための心理的メカニズムであり、感染症脅威は外集団成員に対する顕在的・潜在的な偏見と関連すること、感染脆弱意識には個人差があることが示されている。これらの知見を踏まえた研究により、過去の疾病を思い出すことによって感染症脅威が高められると、WMC高群において感染脆弱意識が低い者よりも高い者は、ホームレスなどのスティグマをもつ集団に対して「支援や援助の必要性はない」と非寛容になる傾向が見出された。 文化的世界観の防衛や感染症脅威への対処が必要な状況下では、WMC高群は低群よりも外集団に対して否定的な態度を形成する可能性があることが示唆された。集団間葛藤の生起過程と解消過程を解明するためには、当事者を取り巻く社会的文脈において顕現化された動機や目標と、認知資源(WMC)の個人差を考慮する必要があることが示された。
|