2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04308
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
酒井 厚 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (70345693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 浩子 金沢学院大学, 文学部, 准教授 (10434474)
梅崎 高行 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (00350439)
則定 百合子 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (10543837)
高橋 英児 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40324173)
田仲 由佳 清泉女学院大学, 人間学部, 講師 (30621122)
室橋 弘人 金沢学院大学, 文学部, 講師 (20409585)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 協働性 / きょうだい / 縦断研究 / コンピテンス / 問題行動 / ソーシャル・キャピタル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年のわが国が抱える就学前後での学校適応上の問題について検討するものである。具体的には、子どもの学校適応への関連要因とされる他者との協働性(協調性や共感、他者への信頼、利他的行動)と各種コンピテンスおよび問題行動に焦点を当て、その発達メカニズムを縦断的調査から明らかにする。 平成29年度は、対象児が幼児期から調査に継続参加している小学1年生から3年生までの約200家庭(単胎児170家庭、双生児30家庭)に質問紙調査を実施し、子どもが小学2年生以下の家庭では親が、小学3年生の家庭では親と子どもが回答した。調査内容は、対象児ときょうだいの他者への協働性(共感・協調性、他者への信頼、向社会的行動)や各種コンピテンス問題行動)と問題行動、それらに関わる要因である家庭、園、地域における各種の環境、気質やパーソナリティ、子どもによる地域活動への参加頻度と積極性であった。 小1と小2時点の縦断データを用いて、子どもの協調共感性(「遊びの中で自分の順番を待てる」など)と認知・言語能力(「文字を書くことが得意」など)および運動能力(「走ることが得意」など)のそれぞれで時点間の相関を見たところいずれも強い正の関連があり、小1時点の状態が1年後も継続することが示された。また、子どもの地域活動への参加頻度についても、2時点間で中程度の正の相関が見られ、小1時点で地域活動に積極的に参加している子どもは小2のときも同様に参加する傾向が見られた。小1時点における子どもの地域活動参加への積極性の高さが、同時点の運動能力や協調共感性の高さと有意に関連するという結果も得られており、小1時点で子どもが能動的に地域に関わる経験が他者との協働性や運動能力を高め発達を促すことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる目的は、就学前後の移行期における他者との協働性や各種コンピテンスの発達メカニズムの解明と社会的適応との関連を調べることにある。平成29年度では、小学1年生から3年生の子どもがいる約200家庭(単胎児170家庭、双生児30家庭)から調査票を回収し、当該時期における子どもの縦断データを蓄積した。 今年度は、対象児が幼児期までに行った縦断データを使用し国内の学会において発表した。はじめに、年少から年中時までの2時点のデータを用いた検討から、年少時点における身体動作の豊富さが同時点の認知・言語能力を高めそれが年中時点まで維持されること、年少時点での休日の外遊び時間の長さが年中時点の認知・言語能力を高めるという結果を報告した。本発表は、わが国では十分に示されていない運動と認知能力の発達との実証的な関連を示した点が評価され、学会での発表章を受章した。また、子どもの社会性や問題行動の発達に関わる要因について、子どもの個人的特性と親のパーソナリティ、家庭内外の環境から検討した一連の結果を報告した。具体的には、1)親がきょうだいによって関わり方を変えることによる子どもの社会性の発達への影響は、年齢や内容によって異なること、2)母親と父親の両者に行った調査から、先行する父親の家族関係を調整する機能やリーダーシップが夫婦相互の信頼関係を高め、それが母親の養育態度の良好さにつながり子どもの問題行動を軽減すること、3)先行する母親の抑うつ傾向の高さが年少時点の子どもの不安傾向を高めることについて、地域や専門家によるサポートネットワークがそれを軽減することであった。これらの結果は、幼児期の子どもの問題行動を抑制するためのメカニズムについて、家庭内外のサブシステムの観点から示した点で重要であろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はパネル調査のため、平成30年度もこれまでと同様の質問紙調査を実施する。対象は、幼児期から調査に参加している小学1年生から3年生までの子どもがいる約200家庭(単胎児170家庭、双生児30家庭)である。子どもが小学2年生以下の家庭には親に、小学3年生の家庭には親と子どもに調査を依頼する。調査内容は、対象児ときょうだいそれぞれによる他者との協働性(協調性や共感、他者への信頼、利他的行動)と各種コンピテンスおよび問題行動と、それらとの関連が予想される要因である。具体的には、対象児を取り巻く環境である家庭、園、地域に関する包括的な要因、子どもの個人的特性である気質やパーソナリティおよび対人スキル、ソーシャル・キャピタル形成における子どもの能動的な関わり(社会参加への積極性など)について測定する。 平成30年度は、本研究課題の最終年度にあたる。そのため、対象児が就学前の段階で収集した質問紙調査、観察調査、実験調査、施設調査などのデータを合わせて整理し、子どもによる他者との協働性に関する各側面の発達メカニズムについて、子ども側要因と多様な環境要因との多変量から検討した結果を報告することに尽力する。国内学会での発表とともに、学術論文としてまとめていく。 また、パネル調査のケース数を増やすために新たな対象者の募集を行う。具体的には、幼稚園や保育所、多胎児支援サークルなどへ参加者募集のための協力を依頼し、応諾した機関を通じて、一人っ子、きょうだいがいる単胎児、双生児がいる約100から150家庭の参加者を募る予定である。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 生活指導2018
Author(s)
高橋英児
Total Pages
80
Publisher
高文研
ISBN
978-4874986448
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