2018 Fiscal Year Research-status Report
自己制御課題としてのロールシャッハ法の神経基盤の探求
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16K04358
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
石橋 正浩 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30324883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 大輔 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任准教授 (30390701)
内海 千種 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (90463322)
相澤 直樹 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10335408)
牧田 潔 愛知学院大学, 心身科学部, 准教授 (00455560)
平石 博敏 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任研究員 (40643789)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 投影法 / ロールシャッハ法 / 機能的核磁気共鳴画像法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては以下のような成果を得た。 文献資料研究については,前年度に引き続き国内外の資料を収集し,整理と分析をおこなった。国内外においてさまざまな実験的手法によりRIMを対象とした神経科学的アプローチによる研究が国内外で増加の傾向にあることを確認した。 実験研究の計画と実施状況として,前年度に引き続き,研究期間内に着手する実験の計画と準備を進めた。6月,12月,3月の3回にわたって研究打ち合わせをおこない,実験計画についての検討をおこなった。実験の方向性として,以前に実施した実験パラダイムを洗練させ,探索的側面の強かった研究をより実証的な方向で遂行していくことを確認し,行動観察ならびに予備実験に着手した。なお8月に金沢大学倫理委員会の承認を得た。 またこれまでの成果を発表する機会として,9月に仙台市で開催された日本心理学会ならびに10月に大阪で開催された日本ロールシャッハ学会において,成果報告をおこなった。いずれも以前の実験データの分析をさらに進めたものである。前者では10枚の図版を5枚の無彩色図版と5枚の彩色図版に分け,各条件において抑うつや不安などの心理尺度得点と相関する脳領域を抽出した。結果として,両条件において共通して相関があったのは強迫的信念と左中側頭回(負の相関)などであった。彩色図版では強迫症状と右島皮質,抑うつと右海馬などで有意な相関が見られた。無彩色条件では強迫症状と左側頭回(負の相関)などで有意な相関が見られた。また後者ではRIMの反応決定因(運動反応,色彩反応)と相関のある脳活動領域を探索的に検討した。結果として,色彩反応と尾状核,人間運動反応と小脳小葉部,動物運動反応と左前頭葉などで有意な相関が見られた。同じ色彩反応や運動反応でも決定因がちがうと活動領域が異なることも観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の達成度を文献資料研究の進捗状況,実験研究の計画と実施状況,ならびに成果の公表の観点から次のように評価した。 RIM課題実施中の脳活動に関する神経科学的知見については,海外での研究を含めここ数年論文数が微増している状況にある。心理検査としてのRIMの理論的基盤を構築しようとする流れが加速しつつあることを確認するとともに,最近の動向を整理した論文を執筆中である。以上より,文献資料研究についてはやや遅れていると評価した。 実験研究の計画と実施状況については,想定しいていた以上に本実験遂行のためのパラダイム設定に時間を要することとなり,2月より行動観察~予備実験に着手した状況にある。以上より,実験研究の計画と実施状況については遅れていると評価した。 成果の公表については,上に述べたように学会発表を2件おこない,日本心理学会では学術大会優秀発表賞を受賞した。文献資料研究の成果については次年度に刊行予定の共著書において公表する予定である。しかし先に述べた実験の遅れから,新たな実験に関する成果を公表できる段階にはない。以上より成果の公表についてはやや遅れていると評価した。 以上に示した研究計画全体の進捗状況を考慮して,本年度の本研究課題の実施状況はやや遅れているものと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の研究実施状況を考慮して,文献資料研究,調査研究,研究成果の公表に関する研究推進策として以下の点を講じることとした。 文献資料研究については,現在執筆中のレビュー論文を完成させるとともに,さらに国内外の資料収集を継続し,さらなる知見の集積に取り組むものとする。先に述べたようにRIMを対象とした神経科学的研究は国内外で継続的に発表される傾向にあるため,これらの研究の動向を注視することにより,実験パラダイムの確立に努めるものとする。 実験研究については,可能な限り早急に本実験を実施するものとする。実施に際しては実験施設である金沢大学のある石川県の臨床心理士会などを通して実験を補助する人員(臨床心理士)を募り,効率的な実験スケジュールを組むように努めるものとする。 成果の公表にあたっては,現在執筆中のレビュー論文を完成させるとともに,国内の心理学関連団体での発表,心理学関連の学術専門誌,大学紀要等に論文の投稿を行う。その際,研究代表者および研究分担者の所属大学の学術情報データベース,ResearchmapやResearchGateなどの研究者向けデータベースやSNSを積極的に活用し,研究成果の効率的で円滑な社会への還元をめざす。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,進捗状況で述べた通り本実験を開始することができていない状況である。そのため,実験協力者への謝金,実験補助者への謝金,実験実施に伴い発生する研究代表者・研究分担者の旅費ならびに消耗品費に関する執行が行われなかったことによる。 次年度での利用計画としては,本実験を開始することにともない上に述べた各種の費用を執行することになるため,計画的に実験スケジュールをたて効率的な研究費の執行とデータの収集に努める。また文献資料研究の遂行に必要な複写費や消耗品費,成果発表に伴い発生する学会参加費および旅費についても適宜執行する。
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Research Products
(2 results)