2023 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the self-realization process and psychological change of person with gender identity disorder
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16K04404
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
吉野 真紀 日本福祉大学, 教育・心理学部, 教授 (60548402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
織田 裕行 関西医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90340679) [Withdrawn]
木下 利彦 関西医科大学, 医学部, 教授 (20186290)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 性別違和/性同一性障害 / 心理的変化 / 自己実現 / 心理検査 / ロールシャッハ・テスト / 半構造化面接 / 戸籍の性別変更 / 性別違和の包括的医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、性同一性障害(以下、GID)当事者を対象とし、治療前と治療を経て概ね臨む性別での生活を実現した時点とを比較し、当事者の自己実現のあり方と心理的変化を明らかにすることである。GID包括医療を求めて受診した対象者に、初診時および治療経過後に心理検査を実施し、うち同意のとれた5名に対し半構造化面接を実施した。対象者1名の心理検査と半構造化面接の内容を分析し、客観的変化の指標と主観的な心理的変化について事例研究として発表した。また、治療前後にロールシャッハテストを実施した対象者4名の結果を比較したところ、性格傾向は個別性が高いが共通点として、S-ConとDスコアの改善がみられた。つまり治療経過を経て、自殺の危険性という最悪の事態を回避することができ、ストレスに対する耐性が向上したことがわかった。 半構造化面接からは、治療過程を進め望む性別での生活に移行する中で、受療が重要な節目となっていること、治療段階を進めることによりストレスの内容が変化していくこと、社会生活やプライベートな生活での理解者の存在が大きいこと、同じような悩みを生き抜いている仲間同士の繋がりに支えられたことが抽出された。ストレスの内容については、望む性別で生きていけるようになり心の負担が軽減し自分らしくいられるようになった一方で、社会(職場など)で認めてもらうための様々な対応や時には嫌がらせなどに遭遇するなどの困難を経験し、家族関係にも変化を生じている。また、身体的治療による副作用や予後の不安など新たなストレスも生起することがわかった。それでも自分らしい性別で生きるために努力してきた今の自分を受け入れているように感じられた。 治療や支援は性別変更や身体的治療が済めば終わりではないことを念頭においてかかわる必要がある。そして、性の多様性に対する社会の理解を促進する働きかけが重要である。
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Remarks |
エクスプロラシオン・ジャポン2023により、フランスからジャン・バティスト・マルシャン准教授(ポワティエ大学)、フランソワ・ディビッド・カンプス教授(リヨン大学)を招き、日本福祉大学心理臨床研究センターおよび大阪医科薬科大学神経精神医学教室共催にて「ジェンダー・セクシュアリティ講演会」を開催し、日仏の性別違和や異性装に関するロールシャッハ研究交流を行った。
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Research Products
(4 results)