2017 Fiscal Year Research-status Report
若年層における対人関係カウンセリングのストレスコーピング能力向上効果
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16K04406
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
小野 久江 関西学院大学, 文学部, 教授 (40324925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻井 農亜 近畿大学, 医学部, 准教授 (90460914)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抑うつ状態 / ストレスコーピング / カウンセリング / 心理的介入 / 若年層成人 / 脳血流量 / NIRS |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、若年層成人(18歳以上39歳以下)におけるうつ状態の増加が指摘されている。その背景のひとつとして、未熟なストレス対処方法が考えられる。対人関係カウンセリング(Interpersonal Counseling: IPC)は、コミュニケーション技術の習得を目指すという教育的要素をもつカウンセリング技法のひとつである。そこで本研究では、若年層成人のうつ状態に対するIPCの効果を、ストレス対処方法の変化、抑うつ状態に対する長期的効果、および脳血流の変化などの観点から検討している。 2017年度までに53名の研究参加同意者を得た。このうち、33名についてはカウンセリングが終了し、28名についてはカウンセリング後12週間の経過観察も終了した。これまでの結果としては、IPCを受けた群(IPC群 17名)と通常のカウンセリングを受けた群(Counseling As Usual: CAU群 16名)ともに、カウンセリング直後の抑うつ状態の変化は見られなかった。ストレス対処方法に関しては、感情的なストレス対処方法が両群ともに減る可能性が示された。また、IPC群では論理的なストレス対処方法が強くなる可能性も示された。抑うつ状態に対する長期的な効果としては、IPC群(14名)、CAU群(14名)ともにカウンセリング12週間後の抑うつ状態が改善していた。なお、カウンセリングによる有害な出来事はIPC群およびCAU群のどちらでも生じなかった。 2017年度は、これらの結果ならびに関連研究結果を国内学会や国際学会で発表するとともに、論文としても公表した。今後は、研究参加同意者をさらに集めて検討を深めていくとともに、脳血流量や自閉スペクトラム症傾向等との関連についても検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、68名の研究参加者を予定している。2017年度までに53名からの研究参加同意が得られており、2018年度中に予定の参加者数を集められると考える。また、対人関係カウンセリングならびに通常のカウンセリングを行うカウンセラーの教育およびスーパーバイズも順調に進んでいる。 研究結果の解析についても、抑うつ状態やストレス対処方法などについては順調に進んでおり、中間報告として公表もできている。しかし、近赤外線スペクトロスコピィ(near-infrared spectroscopy: NIRS)を用いた脳血流の解析については予定より遅れているため、2018年度に集中して解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究参加同意者を募集し、予定の68名とする。現在、研究参加希望者としては20歳代の大学生の登録が多いため、今後は、社会人や30歳代の若年層成人に対する参加募集をより積極的に行っていきたいと考える。 また、研究進捗のためだけでなく、対人関係カウンセリングの啓発のためにも、対人関係カウンセリングについての教育研修会等を開催していく予定である。なお、近赤外線スペクトロスコピィ(near-infrared spectroscopy: NIRS)を用いた脳血流データの解析については統計専門家の協力を得て進めてゆく。 2018年度中に本研究結果をまとめ、適切な国際学術雑誌に投稿することを予定している。
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Causes of Carryover |
2017年6月にカナダのトロント大学で開催されたThe 7th Conference of the International Society of Interpersonal Psychotherapyでの発表に対し、関西学院大学から大学院海外研究助成金を得られたため、旅費の支出が予定より少なくなった。また、国際学会発表や論文の英文校正料および掲載料についても予定額を下回った。 2018年度は、研究参加を待機している研究参加同意者のカウンセリングを迅速に行うためにカウンセラーの数を増やす予定であり、その人件費がかかると考える。また、研究成果の統計解析のために専門的知識の提供を受ける必要があり、その謝金等の支払いが増加すると考える。 さらに、最終研究年度となるため、研究結果の公表のための国内・国際学会参加や論文出版に関わる費用が必要となる。また、一般市民を対象とした研究成果公開活動などに関わる経費も必要になると考える。
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Research Products
(10 results)