2016 Fiscal Year Research-status Report
マインドワンダリングのポジティブな機能に関する多角的検討
Project/Area Number |
16K04420
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
関口 貴裕 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90334458)
|
Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
Keywords | マインドワンダリング / 知的好奇心 / 無意図的音楽イメージ / イヤーワーム / 経験サンプリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,マインドワンダリング(MW)が他の心的活動に対して持つポジティブな機能(機能的意義)を明らかにするために,1)MWが記憶の働きに与える影響,2)MWが創造的思考に与える影響,3)課題無関連思考の内容が持つ機能のそれぞれについて,その実在性と特徴を明確にすることである。これに関し平成28年度は,以下の2つの研究を行った。 1.MWの機能の一つは,関心事について詳しく考え,プランニングをしたり,問題解決など促したりすることである。そうであるならば,様々なことに深く関心を持つ知的好奇心の強い者はMWが多い可能性がある。そこで本年度は,知的好奇心の強さが,MWのポジティブ機能の基盤としてMWの起こりやすさに影響すると仮説をたて,それを質問紙法により検証した。大学生約200人に,知的好奇心尺度(西川・雨宮,2015),MW質問紙(MWQ:梶村・野村,2016),特性不安尺度(STAI:清水・今栄,1981)に回答を求め,得られた回答を分析したところ,特性不安が低い参加者で「拡散的好奇心」の強さとMW傾向の間に正の相関が見られた。この結果から,新奇な情報を幅広く探し求める動機づけが高い人はMWをしやすい可能性が示唆された。 2.意図と無関係に頭の中に音楽イメージが広がる「無意図的音楽イメージ」の生起ならびにその快・不快に影響する個人特性(音楽経験,性格5因子,強迫傾向)を,日常生活における無意図的音楽イメージの経験サンプリングにより検討した。約100名の学生から得られたデータを分析した結果,無意図的音楽イメージの生起しやすさには音楽経験,および強迫傾向「侵入的思考」が影響すること,その快・不快には,強迫傾向「洗浄強迫」が影響することが示された。また,無意図的音楽イメージは快なものが多く,無意図的音楽イメージが感情状態を快に保つ機能を持つことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した研究のうち,「fNIRSによる脳血流測定を通じたMW測定法の検討」については,交付申請が11月であったことからfNIRS装置の導入が遅れ,機器のセットアップを済ませたに終わった。これに対し「知的好奇心の個人差がMW生起に与える影響の検討」については,計画通り質問紙調査を行い,一定の成果を得ることができた。また,当初計画に加え,音楽に関するマインドワンダリングと言える「無意図的音楽イメージ」に関する研究を行い,新奇な知見を得ることができたとともに,今後の研究に向けて経験サンプリング法の実施方法を確立することができた。しかしながら,MWが記憶や創造的思考に与える影響については,その具体的検討に取りかかることができなかった。 以上より,初年度としては,今後の研究に向けた準備を進めることができたが,研究課題の目的に即し十分な成果が得られたとは言えないため,平成28年度の研究は「やや遅れている」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成28年度の成果を学会,論文誌にて発表するとともに,1)MWが記憶の働きに与える影響,2)MWが創造的思考に与える影響,3)課題無関連思考の内容が持つ機能の3つについて,具体的な検討を進める。研究は,2)MWが記憶の働きに与える影響を優先して行う。そのために平成29年度はfNIRSによるMW測定法の確立を5~6月に行い,9月より順次,データ収集を行っていく。その途上で,3)課題無関連思考の内容が持つ機能の検討,1)MWが創造的思考に与える影響の検討の順で研究実施の準備を行っていく。また,平成29年9月の日本心理学会大会にて,MWのポジティブ機能についての自主シンポジウムを開催し,関連する研究者から知見の収集,意見交換を行う。
|
Causes of Carryover |
平成28年度の研究を使用額の範囲で遂行することができたため,残額を次年度使用額とした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,平成28年度の研究を英文誌に投稿する際の英文構成費,論文投稿費として使用する。
|