2017 Fiscal Year Research-status Report
省察的実践者の力量形成とその評価の組織化に関する実践研究
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16K04542
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
柳澤 昌一 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成・院), 教授 (70191153)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 省察的実践 / 教育評価 / 実践記録 / 専門性形成 / 社会教育職員 / 社会教育実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては省察的実践者の力量形成とその評価をめぐり、A.省察的実践者の力量形成をめぐる理論的研究、B.実践者からの聴き取りと実践者自身の記録の跡づけに基づく事例研究、およびC.それらの基礎研究をふまえた評価の組織化についてのモデルの構想・試行を連動して進めている。平成29年度はそれぞれについて次のような研究を進めた。 A. [省察的実践力をめぐる評価の理論的検討] D.A.ショーン『省察的実践者の教育』における専門職教育の実習場面の事例研究とその方法論および理論的枠組みついての検討を通じて、ショーンにおける省察的実践の力量についての評価の視点と構造の析出を進めた。ショーンは、同著の中で省察的実践への学習過程を長期的な学習における学習者自身の省察的な記録に基づいて捉えているが、このアプローチは本研究における実践者自身の省察的な実践記録にもとづく評価の基盤となる。 B. [社会教育職員の実践力形成に関わる長期的な事例研究に基づく評価の視点・方法の検討] 実践者の力量形成過程については、その長期の展開過程を跡づけが不可欠となるが本研究では、長期的な実践経験を重ねている社会教育職員から実践の長期的な展開とそれに関わる学習・研究のプロセスを語っていただき、その展開とその条件と解明する取り組みを重ねている。実践者が取り組む実践の発展過程・持続的な組織化の発展は実践者の力量形成の帰結でありまたその所作であり、その検証が実践力形成の評価と直接的につながるものとなる。 C. [省察的実践力の評価の組織化およびその制度化の可能性をめぐる実践研究の展開] 日本社会教育学会および日本社会教育職員養成協議会の社会教育職員養成をめぐるプロジェクト研究とも関わり、実践記録に基づく評価の組織化をめぐる検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はA.省察的実践者の力量形成をめぐる理論的研究、B.実践者からの聴き取りと実践者自身の記録の跡づけに基づく事例研究、およびC.それらの基礎研究をふまえた評価の組織化についてのモデルの構想・試行のそれぞれについて、次のように研究を進めた。 A. [省察的実践力をめぐる評価の理論的検討] D.A.ショーンEducating the Reflective Practitioner,1987の全訳刊行を受け、平成29年度には、省察的実践者の教育をめぐる、社会教育・看護教育・教師教育をはじめとする研究者の研究会を組織するとともに、ここでの共同研究を踏まえ雑誌『看護教育』においてショーンの特集号を編集刊行した。同著の中で省察的実践への学習過程を長期的な学習における学習者自身の省察的な記録に基づいて捉えている。このアプローチは本研究における実践者自身の省察的な実践記録にもとづく評価の基盤となる。 B. [社会教育職員の実践力形成に関わる長期的な事例研究に基づく評価の視点・方法の検討]東京・福井・京都の社会教育実践者から、実践経験と実践者としての歩みを聴き取る取り組みを、2017年6月、2018年2月を中心に継続的に進め実践力形成のプロセスとその 評価の方法・視点・組織をめぐる検討を進めている。また福井においては実践者自身の省察的な記録にもとづく実践の検証・評価・展望を進める取り組みを継続的に進めている。 C. [省察的実践力の評価の組織化およびその制度化の可能性をめぐる実践研究の展開] 日本社会教育学会および日本社会教育職員養成協議会の社会教育職員養成をめぐるプロジェクト研究とも関わり、実践記録に基づく評価の組織化をめぐる検討を進めている。また教師の実践力形成をめぐる国際的な学会においてもその成果を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はA.省察的実践者の力量形成をめぐる理論的研究、B.実践者からの聴き取りと実践者自身の記録の跡づけに基づく事例研究、およびC.それらの基礎研究をふまえた評価の組織化についてのモデルの構想・試行のそれぞれについて、次のように研究を進める。 A. [省察的実践力をめぐる評価の理論的検討]D.A.ショーン『省察的実践者の教育』(鳳書房刊)をめぐる分野を超えた協働研究を組織し、引き続き同書におけるショーンの省察的実践者の力量形成をめぐる事例研究をふまえた理論的な枠組みの提起を検証するとともに、力量形成把握とその理論的枠組みを踏まえた省察的実践者の力量形成をめぐる評価の段階的な枠組みの検討を進める。 B. [社会教育職員の実践力形成に関わる長期的な事例研究に基づく評価の視点・方法の検討] 学校教育・看護・福祉等の分野における専門職教育の展開と評価の比較研究を進めることにより、実践力形成評価の形成モデルを構築するとともに。その妥当性の検証に着手する。 C. [省察的実践力の評価の組織化およびその制度化の可能性をめぐる実践研究の展開]日本社会教育学会および日本社会教育職員養成協議会の社会教育職員養成をめぐるプロジェクト研究とも関わり、省察的実践者の力量形成を支える研修・学習プロセスをめぐる組織化の研究を進めるとともに、その中で重要な鍵となる評価の組織についての構想と試行を進める。また省察的実践学会の組織化を進める。
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Causes of Carryover |
理由:2018年2月の福井豪雪にともない、年度末の研究集会等を含め大幅に規模縮小を余儀なくされたことにより、計画された予算の執行を繰り越さざるを得ない状況が生じた。 使用計画:平成29年度に予定されていた社会教育実践者の実践経験と力量形成過程をめぐる跡づけに関する資料集成の印刷刊行を前期に行うとともに平成30年度分の報告書の作成を進める。
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