2016 Fiscal Year Research-status Report
認知症疑いの高齢者に対する教育学的観点からの生涯学習の利活用に関する国際比較研究
Project/Area Number |
16K04551
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
鈴木 尚子 徳島大学, 大学院総合科学研究部(生涯教育), 准教授 (00452657)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 生涯学習 / 認知症 / 高齢者 / 教育学 / 学習支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度前半には、今後の研究を円滑に進めるための基礎調査として、1、我が国の認知症に関する政策動向と国及び地方公共団体による実際の取組の把握、2、学術界全体における関連資料の精読を通じた認知症に関する最先端の研究動向の把握、3、認知症サポーター養成講座や民間の認知症予防講座等への参加によるキャラバンメイトや一般市民との交流を通じた当該問題に対する我が国の全般的意識と活動内容の把握、4、諸外国における教育学的観点からの認知症研究に関する先行研究の整理・検討、を実施した。以上を踏まえ、日本社会教育学会第63回研究大会(2016年9月)において、「諸外国における認知症高齢者への学習支援に関する先行研究の検討」と題する研究発表を行った。 平成28年度後半には、より多様な観点から先行研究を分析した結果を研究論文(「認知症への教育学的アプローチの可能性に関する試論的考察―先行研究の資料分析調査をもとに―」徳島大学大学開放実践センター紀要, Vol.26, 2017年)にまとめた。特に英国に関しては、近年における生涯学習政策と高齢者問題との関連からの論稿(「第2章 高齢化と労働の多様化に対応した英国型生涯学習再構築に向けた試み―“Learning Through Life” (2009)の提言とその後の動向より―」新海英行・松田武雄編著『世界の生涯学習―現状と課題―』大学教育出版, 2016年)を執筆した。加えて、平成29年3月には、英国のブラッドフォードカレッジにおいて、認知症に優しい地域づくりに向けて生涯学習関連施設が果たしうる役割を明らかにすることを主な目的として調査を行った。 教育学の観点からの認知症に関係した先行研究の整理は国内外でもほとんどみられておらず、その意味から平成28年度は本研究課題の基盤を固める上で貴重な成果を析出することができたと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、主に次の点から研究を進めることを計画していたが、それぞれほぼ予定通りの成果を得ることができたため。
1. 研究基盤の構築に向けた広範な視野からの問題点の把握 本研究を今後4年間で円滑に遂行するために必要となる最新の関係資料を収集・精読するとともに、日本認知症ケア学会他、国内外の学術組織の主催する関連集会にも積極的に参加し、様々な分野における最新の学術研究の動向を把握することにより、多様な学問分野において認知症をめぐる問題がどのように論じられているかを総合的に理解することに努めた。 2. 教育学の観点からの認知症をめぐる先行研究の整理・分析と諸事例の検討 我が国では教育学の観点から当該問題はあまり論じられていないため、主に諸外国における先行研究を収集・精読し、教育学の観点から認知症に関する問題がどのように論じられてきたのかを整理・分析した。また、諸事例の検討の一端として、平成29年3月に英国のブラッドフォードカレッジを訪問し、同校の取組を中心に、認知症疑いの高齢者への学習支援をめぐる課題を含め、認知症に優しい地域づくりに向けて生涯学習関連施設が果たしうる役割について明らかにすることを主な目的として調査を実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成28年度に先行研究として収集した実践事例の中から、著しい成果のみられるもので、我が国が参照すべき諸外国の事例を抽出し、先方から了承を得られた関係機関において現地調査を実施していく。具体的には、認知症疑いの高齢者に対する学習支援において、教育学の観点から対象者の症状改善に向けたアプローチがみられる事例を取り上げることを考えている。調査対象となる教育機関においては、効果的なプログラムの参与観察調査の他、運営関係者及び実施者へのインタビュー調査、資料分析調査等を行い、学習支援のあり方、職員研修の内容・方法、生涯学習による高齢者自身の変容、一般市民への意識啓発や知識普及等を中心として、その特徴を明らかにすることを予定している。 同時に、平成28年度に行った英国での調査研究の成果を取りまとめ、関連学会等で発表するとともに、最新動向についても引き続き国内外における情報のアップデートを行っていく。
|
Causes of Carryover |
平成29年3月上旬に、当該研究に関する外国(英国)での調査を実施し、その支払いが翌年度以降になったため、年度内の支払いが済んでいる分の報告をする関係上、このように大幅な残額となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月に支払いが完了する予定である。
|
Research Products
(3 results)