2017 Fiscal Year Research-status Report
学習支援体制の構築における地域人材の発掘・活用に関する日英比較史研究
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16K04568
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
関 直規 東洋大学, 文学部, 教授 (50405106)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音楽の民衆化 / 市民音楽 / 外山國彦 / municipality of Tokyo / comparative history / 成人・コミュニティ教育 / urban residents / London County Council |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日英の公文書館やアーカイブズ等が所蔵する一次資料の調査・発掘に基づき、社会教育・成人教育分野の学習支援体制の構築における地域人材の発掘・活用について、同時代の東京市とロンドン・カウンティ・カウンシルの比較考察から明らかにすることを目的とする。 今年度は、これまで未解明であった、東京市の中核的な取り組みの一つである「市民音楽」事業の実態を実証的に考察した。その結果、1920年代の東京市は、声楽家・音楽教育者の外山國彦等の協力を得て、音楽の民衆化を実現する場になっていたこと、そして、「市民音楽」分野は、(1)市民合唱団・市民音楽研究会、(2)音楽演奏会・音楽講演会並びに(3)短期夜間音楽講習会・巡回夜間音楽講習会の三つに整理できること、また、これらの諸事業が、音楽の専門世界と都市住民の日常生活の有機的な相互作用を促していたこと等がわかった。 他方、英国現地のアーカイブズ等を訪問し、日本では入手困難なロンドンの成人教育史に関する一次資料の調査・収集を継続しつつ、両大戦間期に発展した「成人・コミュニティ教育」(adult and community education)活動をめぐる東京市とロンドン・カウンティ・カウンシルの事例の比較史的考察を行った。両大都市における社会教育ないし成人教育分野の誕生の経緯や、代表的な事業を類型化した上で、活動拠点の確保や専門的人材の効果的な組織化等の性格を明らかにした。なお、この研究成果は、国際的発信のため、英語で執筆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に調査・収集した東京市の社会教育史に関する一次資料を整理・分析し、「市民音楽」事業についての具体的成果を学術論文にまとめた。また、両大戦間期における東京市とロンドン・カウンティ・カウンシルの代表的な社会教育・成人教育事業の成立と展開を検討し、地域人材の発掘・活用を含む、その動向を明らかにした英語論文を執筆する成果を収めた。 同時に、本年度は、ロンドンの貴重な地元資料を所蔵するロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・ライブラリー、ビショップスゲート・インスティテュート・ライブラリー、タワー・ハムレッツ・ローカル・ヒストリー・ライブラリー・アンド・アーカイブズを訪問し、ロンドンの成人教育史関連の一次資料の調査・収集を継続した。それぞれの訪問先の許可を得て、ロンドン・カウンティ・カウンシルの成人教育活動の担い手が執筆したパンフレットや論稿等をデジタル・カメラで約1,000枚撮影することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を進めてきた二年間で、英国現地にてロンドンの成人教育史に関する行政資料、単行本、新聞・雑誌記事、現場レポート、パンフレット等をデジタル・カメラで合計約10,000枚撮影した。また、国内の東京市の社会教育史に関連する資料は、デジタル化が進み、閲覧しやすくなっている。今後は、これまでに確認・収集した広範囲にわたる膨大な資料を丁寧に整理・分析し、学会での発表や論文の執筆等によって、積極的に公表していきたい、と考えている。
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Causes of Carryover |
年度末の海外旅費を翌年度に繰り越し執行したため。
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