2016 Fiscal Year Research-status Report
キャパシティ・ビルディングとしての教師の専門性の開発と学校改善の研究
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16K04569
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
黒田 友紀 日本大学, 理工学部, 准教授 (60631851)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キャパシティ・ビルディング / 学校改善 / 教師の専門性の開発 / 校内研修 / 授業研究 / 教員組合 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は、1.教師の専門性の開発と学校改善の制度とその構造の解明と、2.個人と学校のキャパシティ・ビルディングを促す教師の専門性の開発と学校改善の事例の調査(米国・日本)を中心に研究活動を行った。具体的には以下の通りである。 1.教師の専門性の開発や学校改善の制度と構造の解明:主に文献・資料の収集と分析を進めるなかで、教師の専門性を高めるための研修の実施主体、研修内容、そして学校改善の具体的支援の実態が明らかになっておらず、比較研究がほとんどないことを改めて確認した。 2.実地調査:平成28年度は2月に米国イリノイ州シカゴ市とマサチューセッツ州ボストン市において調査を実施した。シカゴ市の調査では、公立学校の教師の専門性の開発のための研修を担う教員組合で、研修システムとその内容に関する実地調査を行った。ボストン市では、継続的に調査を行っているハイスクールでの校内研修に参加し、校長に対して校内研修に関するインタビュー調査を行った。高校で全スタッフが毎週校内研修を行う取組みは、米国のみならず日本でもほとんど見られない稀な事例である。日本における調査としては、静岡県富士市や愛知県安城市や兵庫県神戸市の学校を訪問し、個別の事例を継続して検討している。 3.研究成果:日本教育学会において、米国ボストン市の学校改善に関する報告を行った。また、日本カリキュラム学会では、学校改善のためのスタンダード・カリキュラム・テストへの巨大財閥や教育企業の関与について報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、研究計画に則って、資料収集および米国・日本の学校調査を計画的に進めることができた。米国の政権交代による新しい連邦教育政策および州・学区への影響については、影響が明らかになるのは次年度以降となることが想定されていたため、次年度以降の課題としたい。米国における調査は、特にシカゴ市では、教師の専門性の開発や学校改善の支援を行っている教員組合のスタッフや教育団体のキーパーソンとコンタクトを取ることができ、次年度以降の調査の基礎を想定以上に固めることができた。ボストン市の調査に関しては、継続的な学校調査を実施できている。カナダに関する基本的な資料収集は現在進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究の重点は、以下の3点である。 1.教師の専門性の開発と学校改善の制度と構造の解明のための資料収集と分析を、引き続き進める。特に、法令、教員免許制度、そして、学区・教育委員会・教員組合・民間教育団体等が提供する教師の専門性を高めるための研修内容や種類等に着目して、その構造と差異を検討する。米国については、トランプ政権の下で今後展開される連邦政策や州法への影響について分析を行う。 2.事例・実地調査として、米国ボストン市のハイスクールにおいて、教師の専門性の開発や学校改善について、教師と校長を対象としたアンケート調査を実施する予定である。シカゴ市では、教師の専門性の開発および授業改善の研修の一環として組み込まれている、Chicago Lesson Study Allianceの授業研究の取組みの実際を調査する。また、ボストン・シカゴ両市の教員組合の教師の専門性の開発および学校改善支援システムについて調査を行う。日本の事例・実地調査として、教育委員会での調査および個別の学校の調査を行う。カナダについては、基礎的な情報を収集した上で、アルバータ州かオンタリオ州において教育部局及び教員組合への調査を行う。 3.米国・カナダ・日本の教師の専門性の開発や学校改善に関する研究を行う研究者との研究会を開催し、研究成果については、日本教育方法学会、および日本教師教育学会等での報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
国内外の図書館等での複写費用を予算として計上したが、海外の図書館において電子媒体による資料の保存が可能の場合があり、想定の支出額を下回った。また、機関の規則に則って注文した洋書が会計期限内に届かないことや、緊急に要する洋書を入手することができないことがあり、消耗図書費から支出することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は、平成29 年度に国際学会・会議に参加予定のため、学会参加費用として支出予定である。
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Research Products
(7 results)