2016 Fiscal Year Research-status Report
高等専修学校における外部と連携したキャリア教育・職業教育の研究―質保証の観点から
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16K04608
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
長尾 博暢 鳥取大学, 大学教育支援機構, 准教授 (90454587)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高等専修学校 / 専修学校高等課程 / キャリア教育 / 職業教育 / 質保証 / 社会的・職業的自立 / 学校内の環境制約 / 学校外との連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高等専修学校(専修学校高等課程)を対象に、これまで学術上も実践上もほとんど行われていない、「質保証」の観点からのキャリア教育・職業教育実践の検証を進めることを目的とする。特に、キャリア教育・職業教育を通じて生徒の社会的・職業的自立が促されることが最も期待される学校種でありながら、多くの高等専修学校が困難をおぼえている、外部と連携した体験型キャリア教育・職業教育の実践について、学校側の制約を克服して取組を継続するための要諦を解明しようとするものである。 後述のとおり、当初予定していた質問紙調査の各校向け実施については、次年度に繰り延べた。しかしながら研究代表者は、同じ平成28年度、高等専修学校関係の文部科学省委託事業に参画することとなったため、同委託事業への参画を通じて得た知見も、本研究課題の進展に活かすよう努めた。高等課程に限定せず、専修学校専門課程や高等学校に関する文献調査の結果も含め、平成28年度の研究実績を端的にまとめると、次のとおりである。 インターンシップ等の体験型職業教育は、高等教育機関との接続という観点からも、就労支援という観点からも、高等専修学校の生徒たちにとってきわめて効果的な教育実践である。にもかかわらず、インターンシップ等の実施に踏み切れていない、あるいは実施の必要性を感じないとする学校の中には、〈インターンシップ=就職(希望)者向け〉というある種の認知バイアスが根強く存在しているケースがあると考えられる。また、〈上級学校への進学(希望)者が中心〉・〈就職(希望)者は少数〉・〈資格を取得させることが重要〉といった当該校の実態(ないしは認識)も、インターンシップ等の実施だけでなく、教育活動や指導、支援の場面全般における外部の企業や団体等との連携に対して、消極的姿勢をもたらす要因になっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画上、平成28年度は、質問紙調査の実施と分析を行うこととなっていたが、調査の実施を平成29年度に持ち越したことから、「順調に進展」とは言い難い。 その理由としては、先述のとおり、本研究課題採択後、研究代表者が高等専修学校関係の平成28年度 文部科学省委託事業に参画する(高専連携分野 調査研究分科会 委員)ことが決まり、同委託事業においても、質問紙調査が全国高等専修学校協会の会員校を対象に行われたことが大きく関係している。研究代表者としては、当初予定していなかったエフォートとして、単年度事業である同委託事業の質問紙調査の年度内実施・分析・報告に従事しつつ、本研究課題については、質問紙調査の実施時期を次年度にスライドし、その間、質問項目の設計のための文献調査等の研究活動に注力することとし、あわせて委託事業側の質問紙調査から得られた知見も、本研究課題の進展に活かすように努めた。よって、区分としては「やや遅れている」が妥当であると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、年度前半に高等専修学校に対する質問紙調査を実施するほか、並行して(特に年度後半を中心に)インタビュー調査を開始する。 インタビュー調査の方針として、高等専修学校のキャリア教育・職業教育に継続的に関与する学外アクターの位置づけの変容に着目する。研究代表者が大学のインターンシップを対象に行った過去の研究では、インターンシップ等のキャリア教育に関与する学外アクターが、非常勤講師など従来もみられた現場実践の担い手という位置づけから、「大学教育改革」等の文脈において教育課程のあり方そのものに対して発言し影響力を及ぼす立場へと質的に変容しつつあることを確認したことから、高等専修学校についても、同様の状況が認められるか、インタビュー調査を通じて確かめる。
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Causes of Carryover |
当初、平成28年度中の実施を計画していた質問紙調査を、平成29年度実施へと延期したことで、質問紙調査実施にかかる経費がそのまま繰り越され、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
質問紙調査の実施時期を平成29年度に延期した以外、当初計画に対して具体的な研究活動自体の変更や修正等の見直しはない。よって、質問紙調査を平成29年度中に行うことで繰り越し額を執行するとともに、平成29年度の研究計画の柱であるインタビュー調査を当初の研究計画どおり粛々と実施していくことで、繰り越し額と平成29年度分請求の助成金を合わせて使用していくことができる。
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