2017 Fiscal Year Research-status Report
合唱歌唱とソロ歌唱の発声比較の視点から見た歌唱教育の再構築―発声の可視化の活用―
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16K04690
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
虫明 眞砂子 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (90206847)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 合唱歌唱 / ソロ歌唱 / 発声 / 音カメラ / 可視化装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、合唱歌唱とソロ歌唱の有する発声上の課題を明確にし、それら課題の改善を図ることで、合唱活動にスムーズに取り組めるようにし、合唱団の増加と歌唱教育のさらなる充実を目指している。 28年度には、合唱歌唱とソロ歌唱の発声比較について検討するため、プロとアマチュアの合唱団員に対するアンケート調査およびプロの合唱団に所属しているソロ歌手(男女)に対する音カメラによる可視化実験を行っている。29年度は、28年度に得られたデータの分析を中心に合唱歌唱とソロ歌唱の比較分析を行った。まず、プロとアマチュアの合唱団員に対するアンケート調査を分析した結果、アマチュア合唱団員は,合唱歌唱時には,呼吸や姿勢などに気をつけ,より良い発声を目指していること,プロ合唱団員は,ハーモニーやビブラートに気をつけ,溶け合った合唱を目指していることがわかった。また,歌唱形態やプロ・アマチュアの別に関わらず,声の響きを重要と捉えられていることも明らかとなった。次に、声楽初学者や小中学生が困難を抱えている声区転換領域での発声についての検討を行った。そのために,プロ歌手による声区転換領域での母音発声を録音し,同時に可視化処理して記録した。これらの結果を,録音された音声については音楽専門家3名による聴取評価を行い,この評価結果に歌手に対して別途行ったヒアリング調査の結果を反映させ,さらに,発声時の可視化情報を総合して,声区転換前後での発声を総合的に評価した。その結果、以下のことが確認された。声区転換領域での発声を可視化した情報により,胸声区と頭声区の違いを確認できることが分かったたこと、発声を胸声区から中声区,頭声区に転換することにより,発声の聴取評価が上昇すること、プロ歌手は,胸声と頭声の声区転換領域の発声について,頭声への意識をもち,響きの増幅や身体の開放に留意していること。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、28年度に行った、アマチュアとプロの合唱団員に対する質問紙調査、合唱指揮者・指導者に対するインタビューを分析した。この分析の結果については、論文発表を行っている。また、28年度に行ったプロ歌手に対する音カメラによる音声の可視化実験の音響分析の検討を共同研究者の熊谷組と行った。研究は概ね順調に進んでいるが、次の可視化実験の準備およびソロ歌唱研究の成果発表(ソロリサイタル)の準備にも時間を要している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成30年(2018年)3月に実施した合唱歌唱とソロ歌唱の音カメラによる可視化実験について,共同研究者である(株)熊谷組中央研究所研究者と共に分析を行う予定である。分析結果は学会での口頭発表及び論文発表を計画している。なお,実験結果については,実験に参加したプロの声楽家に対して意見を求め,また,「日本声楽発声学会」に所属する医師や「声楽音声研究会」(大阪)を主催している医師等より生理学的見地からの意見を求め、議論を重ねたいと考えている。 本年度は、本研究の仕上げの年度となるため、これまでに得られた知見を活かしてソロリサイタルを開催する予定である。また,これまでのアンケート調査結果や可視化実験結果について、総合的に考察を行い、議論の収斂を図っていく予定である。
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Causes of Carryover |
29年度(2017年度)の経費の一部を、30年(2018年)5月に科研の成果発表として開催を予定しているソロリサイタルの経費の使用にまわしたため。
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Research Products
(4 results)