2017 Fiscal Year Research-status Report
音楽的発達と音楽的文化化の観点から検討した幼小連携リズム指導カリキュラムの開発
Project/Area Number |
16K04716
|
Research Institution | Doho University |
Principal Investigator |
水野 伸子 同朋大学, 社会福祉学部, 教授(移行) (30440556)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福本 徹 国立教育政策研究所, 生涯学習政策研究部, 総括研究官 (70413903)
安藤 久夫 岐阜女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90387457)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 拍感 / 同期 / 手拍子 / 生演奏 / 音楽リズム反応記録装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、音楽聴取時の手拍子による同期反応を拍感の現れと捉え、それを解析することにより幼児期の拍感の特徴を明らかにすることを目的とする。平成29年度は、まず、実験方法に記録媒体ではなく生演奏を用いたことの妥当性を、検証実験結果をもとに論述した。《きらきら星変奏曲ハ長調k.265》(モーツァルト作曲)のピアノによる生演奏とDVD再生演奏に対する聴取者の集団的手拍子反応の違いを、打拍率、打拍同期度の観点から検討した。研究分担者らの開発による音楽リズム反応記録装置に記録した情報から4分音符レベル手拍子を抽出し解析した結果、生演奏群における聴取者集団の打拍同期度はDVD再生演奏群より高く、生演奏群の方が手拍子のタイミングはよく揃うことがわかった。打拍率の推移をフーリエ級数展開した結果、第12変奏において生演奏群からのみ3拍周期を示すスペクトルが顕著に認められ、生演奏群は2拍子から3拍子への拍子の変化を手拍子の拍節構造を階層的に変化させて知覚していることが示された。これらにより、同期反応実験に生演奏を用いる妥当性が示された(水野2018)。 並行して、平成28年度に実施したD幼稚園の3~5歳児対象の手拍子同期実験結果の解析を進めた。計測時間は10 msに設定した。リズムへの同期行動(entrainment)は乳児にすでに認められるが、幼児はリズム刺激としての活性化作用で興奮化現象が生じ、速くなる傾向がある(梅本 1999)。今回の実験でも4歳児にその傾向が顕著に認められた。一般に、聴取者は、音楽リズムを認識するために、その枠組みとなる周期的な時間‘internal clock’(Povel and Essens 1985)を手拍子で打つと考える。幼児期はこの‘internal clock’獲得までのプロセスをたどり、本研究はその発達段階を科学的に究明する点に意義がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画は、D幼稚園での実験データを解析し、幼児の拍感の発達過程をモデル化して示すことにあった。現在、概ね順調に解析を終えたところである。平成30年度の学会にて、実験結果をもとに成果を報告する予定である。 生演奏を用いた実験方法の検証結果を論述した論文は、日本音楽教育学会の学会誌「音楽教育学」第47巻第2号(2018年3月発行)に掲載された。これにより、昨年度の日本教育工学会大会で発表したタッピングと手拍子の比較研究も含めると、懸案となっていた、タッピングではなく手拍子を用いたこと、記録媒体ではなく生演奏を用いたことの実験方法としての妥当性を、実証実験から科学的に証明することができた。 手拍子を直接記録する音楽リズム反応記録装置を開発した研究分担者らは、現在、ピアノの鍵盤の動きを感知して演奏データを採取する装置の開発にも着手している。 以上の点から、研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、D幼稚園での実験結果から明らかになった3歳児・4歳児・5歳児の拍感の特徴を、児童対象に実施した先行研究(水野2013-2015)の結果も踏まえて考察し、幼児期の拍感の発達課程をモデル化して示す。その研究成果を学会等にて報告する。 ピアノの鍵盤の動きを感知して演奏データを採取する装置の開発も継続して行い、演奏者と聴取者双方のデータから同期を検討できるシステムの構築に向けて研究を進める。さらには、手拍子を打拍時刻のみではなく、拍圧等の反応自体を採取できる装置の開発も進める。
|
Causes of Carryover |
(理由) 次年度の研究費は、音楽の同期に関する文献・資料収集のための調査旅費、学会等で研究成果を発表するための出張旅費、研究分担者らと装置の開発のための研究会や調査のための旅費や経費に使用する。ピアノ演奏データを採取する装置の開発、拍圧等の反応自体を採取できる装置の開発費用としても使用する。 (使用計画) 研究費は、次年度前半には研究分担者や研究協力者らとの研究会議にかかる旅費や経費、および、装置の開発費用に使用する。後半は、研究成果を学会等で発表する出張旅費や論文投稿費用に使用する。また、年間を通じて、文献や資料収集、研究会等にかかる旅費や経費に使用する計画である。
|