2016 Fiscal Year Research-status Report
「生命尊重」の価値に基づいて行動する力を育成する道徳教育プログラムの開発
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16K04766
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 由美子 広島大学, 教育学研究科, 教授 (40206545)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 道徳教育 / 生命尊重の価値 / 道徳教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度の目的は、「生命尊重」の価値を教えるための教材や資料を収集し特徴を明らかにすることを通して、「生命尊重」の価値に特化した道徳教育プログラムの理論的基礎を構築することであった。研究会を3回開催した。 まず、学習指導要領の変遷を押さえ、平成元年(1989)度から「生命尊重」の価値が項目として明示されたことから、主として1980年代以降に行われた「生命尊重」に関する教材を用いた実践研究論文を収集した。また、WCCI(世界教育課程・教育方法学会・ハンガリー)、OMEP(世界幼児教育学会・韓国)に参加し海外の資料を収集した。これらから日本における「生命尊重」の価値には、「自分」「自然」「社会」の3領域があることが示された。 そこでこれら3領域をそれぞれ含む道徳教材を開発し、小学生を対象に研究授業を行い児童の思考の変容を質的に調査した。思考の変容の分析には、鈴木ら(2012)によるいのち観の発達モデルを用いた。その結果、いのち観の発達には、「いのち観の根幹」「いのち観の空間的、時間的拡大」「いのち観の創出・再構成」「いのち観の確立・展開」の4段階があることが示された。これをいのち観の発達モデル2とした。またそれぞれにおいて、「自分」「自然」「社会」が関連しあっているが、めざす方向は「人類の一員として、かけがえのない自分の生きる道を見つける」ことにあることが示された。また、めざす方向への教育方法として大人から教えられながら、自分の経験や学びをこね合わせて自分の生き方を練り上げていく方法論を「すり鉢式道徳教育論」と名づけ提案した。 今年度の研究により、道徳教育プログラムの基礎理論として、「自分」「自然」「社会」を関連させながら自分の生きる道を見つけるよう導くことが目的であること、そのための方法論としていのち観の発達モデル2、すり鉢式道徳教育論を提案できたことが成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目的は、「生命尊重」の価値を教える教材や資料、道徳教育プログラムに関する内外の資料を収集し、開発する道徳教育プログラムの理論的基礎を明らかにすることになった。今年度は、教材や資料の収集は十分にできたが、時代的変遷の分析は不十分だったので引き続き行っていく。 WCCI(世界教育課程・教育方法学会・ハンガリー)、OMEP(世界幼児教育学会・韓国)に参加し、海外での動向に係る資料収集もできた。「生命尊重」が日本独特の概念を含んでいることはわかったが、まだ教材に反映できるにいたっていないので、引き続き分析を行って教材に反映させていく。 今年度は資料収集によって知見を得るだけでなく、得られた知見を基に研究授業を行って児童の思考の変容を質的に調査することで、道徳教育プログラムの理論的基礎を構築しただけでなく、いのち観の発達モデル2とすり鉢式道徳教育論という具体的な方法まで提案できたことで、来年度の道徳教育プログラムモデルの開発への継続が十分にできるところまで進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、H28年度に明らかにした道徳教育プログラムの目的と方法論に基づいて、道徳教育プログラムモデルの開発を行う。まず日本人に独特の「生命尊重」の価値観を明らかにし、それを反映した教材を作成する。道徳教材の作成にあたっては、研究協力者として小原智穂教諭、松田芳明教諭、有田雅代教諭、福原栄治教諭の協力を仰ぐ。道徳教育プログラムモデルの開発にあたっては、主として効果検証を宮里智恵教授に、プログラムの開発に森川敦子准教授、椋木香子准教授、絵玉睦美講師の協力を仰ぐ。資料の収集・記録・保存にあたっては、趙碩(院生)、藤井瞳(院生)の協力を仰ぐ。 作成した教材で研究授業を行い効果を検証する。それに基づいて、教科や体験活動と組み合わせた道徳教育プログラムモデルを開発する。環太平洋幼児教育学会(2017・フィリピン)で発表するとともに、資料収集を行う予定である。また、研究会を年3回開催する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は会議を大学で行うことができたことにより、予定したよりも会議費が安価ですんだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
会議はできるだけ学内で行うようにしたいが、参加者の利便を考えて学外になる場合もあるので、繰り越し分はその際に使用するようにする。本年度請求している助成金と合わせ、研究活動が十分にできるようにする。
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Research Products
(1 results)