2016 Fiscal Year Research-status Report
音楽のきき方・考え方を育成する鑑賞教材の開発研究 -ジュネーヴの教育からの示唆-
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16K04775
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
今 由佳里 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (40440838)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スイス / 小学校 / 学校コンサート / 鑑賞 / 音楽授業 |
Outline of Annual Research Achievements |
鑑賞の授業は、子どもたちが受け身になりがちであり能動的で活発な学習活動に発展させることは難しいという日本の音楽教師の声をこれまで度々耳にしてきた。それは授業が、教師による作品解説から始まり、楽曲を鑑賞、最後に感想を書く、という一連のパターン化された流れに陥ってしまい、子どもたちが音楽のきき方・考え方の育成を図れたかについて自信を持てないという理由からである。 研究従事者は、これまでスイス・フランス語圏の学校音楽教育に関する調査研究を継続して行い、現地で100時間を超える公立小学校の音楽科授業を実際に観察してきた。その際、ジュネーヴ州が長年にわたり取り組んでいるConcert Scolaire(学校コンサート)事前学習の授業を目にする機会を得、教師からの一方向的な教授スタイルではない、子どもたちが能動的かつ創造的な学びを生成している授業のあり方に、日本の鑑賞教育が抱える課題解決の糸口を見いだした。 授業では、子どもたちが音楽作品と「語りあう」ための幾つかのヒントを教師は与えている。解釈を押し付けるのではなく、子どもたちの自由なイマジネーションを尊重し、作品へ対する様々なクエスチョンを引き出す手助けを教師は担っているのである。 本研究では、子どもたちの興味・関心をかき立て、創造性豊かなアプローチがなされているジュネーヴ州の学校コンサートの取組みについて調査研究し、その成果を日本の音楽教育へ還元することを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度にあたる平成28年度は、ジュネーヴ州が提供する学校コンサートに関する資料の収集を中心に行った。1月に実施したジュネーヴ調査では、現地小学校教員にきき取り調査を行うと同時に、ジュネーヴ州公教育課が独自に作成する事前学習用の指導書(教材用音源含む)についても数多く収集できた。また、MEGにおいて開催されたDanse des Collectionsに参加する機会も得られ、伝統的ダンスから現代ダンスに至るまでの歴史と背景、ダンス音楽について多くの示唆を得るとともにタブレットPCを用いた音楽教授プレゼンテーションの効果的方法についても知ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、ジュネーヴ州公教育課で独自に作成している学校コンサート事前学習用の指導書を分析し、取り上げられている作品の傾向やアプローチの方法・教材内容を考察することにより、子どもたちの鑑賞能力育成のための学習内容を明らかにする。同時に教材用音源に関しても、分析考察を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は、旅費や物品購入において些少な金額の差異が生じたために次年度へ持ち越す使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費あるいは物品購入費に組み込む予定である。
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Research Products
(4 results)