2017 Fiscal Year Research-status Report
「数と計算」領域の学習にスペシャル・ニーズのある子どもたちへの教育介入教材の開発
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16K04776
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
小田切 忠人 琉球大学, 教育学部, 教授 (00112441)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 数認識の発達 / 基礎数学 / ニューメラシー / 学習困難 / 知的障がい / 発達障がい / 概念的な理解 / 十進位取り記数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
基礎的な数学学習(Basic Mathematics or Numeracy)である「数と計算」領域の学習にスペシャル・ニーズ(学習困難)がある児童・生徒について、教育介入教材の適切さ(必要性・有効性・一般性)を検証するために、知的障がいのある成人(小学生の時から教育介入を続けてきた被験者を含む)に対して、治療的な(高等部を卒業しているので既習のはずであるが未達成、あるいは、その前の段階でつまずいている学習課題課題に対して)教育介入を継続した。 学習困難の要因が発達障がいか知的障がいかによって、「数と計算」領域の学習における困難の内容は大きく異なる。知的障がいがある場合、百までの数唱や読み書きを覚えても、それが十進位取り記数法を理解することにはならない。十円玉が3個と一円玉が4個あることが確認できても「さんじゅうよん」円を同定できるとは限らないし、さらには「34」円を同定できるとは限らない。この学習困難を克服する学習の過程を教育「教材」で確認した。その上で、さらなる学習課題(数の大小関係)に対して教育介入を継続している。 知的障がいのある児童・生徒の十進位取り記数法の概念的な理解を内容とする学習達成の可能性と、その学習過程となる教材の臨床的な開発は、算数・数学の教育において、スペシャル・ニーズのある児童・生徒に限らず、すべての児童・生徒の学びの全てにわたって、様々な示唆を与える。その一端は、数学教育協議会第65回全国研究大会(2017年8月)の記念講演で紹介した。 また、開発した「教材」の整理ょ進めるとともに、知的障が等が要因として疑われる児童・生徒への教育介入として研究成果を広く還元することに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
教育介入によるデータの収集や作成したデータベースシステムの64ビット対応化・デバック等などは進めた。 しかし、様々な学校教育の脈絡において、研究成果を活用するために、先進的な教育環境にある学校教育(Yena Plan Schoolsなど)の課題を確認するための調査を予定していたが、積み残した。また、開発「教材」を電子化し、広く利用してもらえるように整理する作業も遅れている。 以上の作業の積み残し・遅れは、学部運営に係る校務のため十分なエホートをかけられなかったことによる。次年度は、その校務から離れ、十分なエホートをかけることができるので、計画期間に予定の作業を終えることは可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画では、次年度、最終年度して、研究の成果を振り返り、補足し、まとめることを主としていた。具体的には、今年度の積み残し分を含めて、以下の作業課題を掲げて取り組む。 ・治療的な教育介入を継続し(週1回、2名の被験児を予定)、「教材」開発をさらに進める。・開発教材の整理・電子化を進める。・開発WEBデータベースシステムのデバックとデータのアップロードを行う。・研究成果の活用のために、先進的に教育開発を進める学校におけるスペシャル・ニーズのある子どもたちに対する実践課題を訪問調査する。・ダウン症などの知的な障がいを学習困難の要因とする児童・生徒について、より広く訪問調査し、様々な学習達成状況により十分に応じられるように、開発教材を改善・補充する。・研究報告書(絵本、あるいは、教材集の作成を含む)を作成する。・開発WEBデータベースの活用を試行し、研究期間終了後の、同データベースシステムの広い活用を準備する。
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Causes of Carryover |
まず、旅費については、オランダのYena Plan SchoolsやSpecial Needs Educationにおける基礎数学教育の教育実践課題の調査を2017年度予定していたが、実施しなかった(海外旅費)。2018年度に実施する。また、WEBデータベースシステムの活用開発のためのニーズのある児童・生徒への訪問調査を拡大継続する(国内旅費)。 次に、人件費・謝金についてはスペシャル・ニーズのある被験児への教育介入データの電子化のために資料整理補助と、開発WEBデータベースの英語化(日英二か国語化)のための謝金として支出を予定している。
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