2016 Fiscal Year Research-status Report
日本のオルタナティブ学校の教育課程・学習計画・認証評価・スタッフ養成に関する研究
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16K04780
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
吉田 敦彦 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (20210677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 佳之 聖心女子大学, 文学部, 教授 (20280513)
今井 重孝 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (80160026) [Withdrawn]
西村 拓生 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (10228223)
西平 直 京都大学, 教育学研究科, 教授 (90228205)
森岡 次郎 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (10452385)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教育学 / オルタナティブ教育 / 公共性 / シュタイナー学校 / ホリスティック教育 / サステイナブル・スクール / ホールスクール・アプローチ / 総合的学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究計画に示した研究課題の政策的背景であった「多様な教育機会の確保に関する法律(案)」が2016年12月「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」という形で国会で成立し、2017年度から施行される運びとなった。2016年度の研究は、その政策動向を追跡しつつ、オルタナティブ教育の観点から分析することが主たる課題となった。月例で関西のオルタナティブ教育関係者による準備会合を重ねたうえで、全国のオルタナティブ諸学校、多様な学びの関係者が一堂に会して実践と研究の交流を行うフォーラム(2017年2月)を開催した。その研究討議によって、この新法は、さしあたり不登校対策支援的な目的が強く、オルタナティブ教育の機会を確保するためには、新たな観点から課題設定を行う必要のあることが明らかになった。 2.オルタナティブ学校の学習の質を評価する方法の開発については、ESDを推進する重点校を選定する委員会(文科省ユネスコパートナーシップ事業)に参画し、7項目の評価基準を開発した。この基準に基づいて全国の24校を「サステイナブル・スクール」として選出し、そのなかにNPO法人のオルタナティブ学校が4校含まれた。今後、ピア評価を取り入れながら、この基準を洗練していく緒に就いた。 3.スタッフ養成については、日本シュタイナー学校協会の専門会員として参画してきた連携型の教員養成プログラムの素案ができ、次年度に詳細を詰めたうえで、2018年8月に運用を開始する方針が決まった。 4.その他、オルタナティブ教育の基礎的研究については、代表者による「オルタナティブの三つの意味合い:一元化と多様化のはざまで」の論考を含んだ永田佳之(分担者)編著『変容する世界のオルタナティブ教育』など、いくつかの公刊を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初設定した4つの研究課題 [A]教育課程 [B]学習計画 [C]認証評価 [D]スタッフ養成については、それぞれ次のような進捗状況にある。 [A]オルタナティブ諸学校の教育課程の概要を把握する調査研究については、文科省の日本・ユネスコパートナーシップ事業の推進委員として、全国のESD重点形成校(4つのオルタナティブ校を含む24校)をレヴューした。その結果、オルタナティブ校の教育の特質を把握するためには、狭義のカリキュラムに焦点付けるよりも、「ホールスクール・アプローチ」の観点が重要であることが明らかになった。 [B]「多様な教育機会確保法案」に当初は盛り込まれていた「個別学習計画」は、法案の審議過程で削除されたため本研究の主題的な検討課題から外すことにした。あらためて「多様な学び」について研究を行う方向性を探るため、第4回多様な学び実践研究フォーラムにおいては次のような分科会を展開した。「多様な学びを問い直す」「自己肯定感を育む子育てとその支援」「公教育とオルタナティブ教育のアウフヘーベン」「多様な学び保障の法制化の現状と課題」「子どもの権利を考える」「オルタナティブな学びの場:支えあう仕組みづくり」など。 [C]サステイナブル・スクールの選定作業を通して、オルタナティブ諸学校での教育の質を評価する7つの基準を作成し、その適用を試みた。また、上記の「オルタナティブな学びの場:支えあう仕組みづくり」分科会を主宰し、認証評価を行う中間支援組織として、地域別の連絡協議会や、学校種別による協会(ex.日本シュタイナー学校協会)の活動実態を把握した。 [D]日本シュタイナー学校協会における連携型教員養成システムを構築するプロセスに関わってアクションリサーチを行った。また、公教育との連携したシュタイナー教員養成プログラムを開発し実施した(大阪府立大学公開講座全12回)。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題[A]については、全国のESD重点形成校の推進事業を通して、20校の学校教育法一条校と4校のオルタナティブ校の実践動向を追跡する。その際、「学校の組織運営」「教授と学習」「学校環境づくり」「地域とのパートナーシップ」の4領域とそれを支える「スクール文化」という包括的な観点である「ホールスクール・アプローチ」を比較対照の観点とする。 [B]の「個別学習計画」については、政策動向の変化を踏まえて研究課題から外す。それに代えて、オルタナティブ校と地域の教育委員会との連携協議のあり方や、学校種別ごとの中間支援組織の形成プロセスについて予備的な調査を行う。 [C]については、サステイナブル・スクールの評価基準とした7つの観点Vision, Continuity, Integration, Empowerment, Innovation, Collaboration, Transformation, Replicableについて、その後の継続的なピア評価にも適用しながらその効力を検証していく。 [D]については、次年度に本格化する日本シュタイナー学校協会による連携型シュタイナー教員養成プログラムの開発に従事し、その一環として、大阪府立大学での「シュタイナー教育ゼミナール」のカリキュラム開発も行う。 さらに、多様な学び実践研究フォーラムを重ねる過程で確認された、オルタナティブ教育領域の新しい研究者層と連携した、共同研究組織の拡張の必要性が生じてきた。そのため関連する研究者との研究交流を積極的に行い、共同研究ネットワークの形成に向けた基盤づくりを行う。なお引き続き、オルタナティブ教育に関する国際動向の追跡や、基礎的・理念的な研究についても積み重ねていく。
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Causes of Carryover |
今年度予算において研究会を開催するための旅費を申請していたが、関西での開催が重なったため、当初予定してた旅費に残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の実践研究フォーラムは東京(早稲田大学)での開催を予定しており、また全国のオルタナティブ学校の訪問調査を本格化するため、それに必要な旅費に充てることにする。
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Research Products
(16 results)