2017 Fiscal Year Research-status Report
青年期発達障害者の自尊感情の安定性とwell-beingに関する心理学的研究
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16K04813
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小島 道生 筑波大学, 人間系, 准教授 (50362827)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発達障害 / 自尊感情 / well-being / 源泉 |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害者を対象として、自尊感情と主観的幸福感(well-being)に関して、アンケート調査を実施した。その結果、自閉スペクトラム症者27名と同年代の対照群60名との比較を行ったが、自尊感情と主観的幸福感について違いはなかった。ただし、自閉スペクトラム症の学生の主観的幸福感は、社会人に比べて低いことが示唆された。そして、自閉スペクトラム症者と同年代の対照群に共通して自尊感情が高いと主観的幸福感も高くなることが明らかとなった。したがって,自尊感情を高めることが主観的幸福感をも高める可能性があり,自閉スペクトラム症の学生について,特に心理的支援を行っていく必要性があると考えられた。また、青年期ASD者を対象として、自尊感情と主観的幸福感にかかわる影響要因を明らかにするために、面接調査を実施した。その結果、主観的幸福感の測定とともに、幸せに感じている事柄について尋ねた。その結果、回答理由に関して家族関係や友人関係などの対人関係にかかわる言及は少なく、源泉においても定型発達者よりも偏っている可能性が示唆された。また、中学生や高校生においては、友人とのかかわっている時や良い成績をとった時などに主観的幸福感は高まることが示唆された。逆に、他者よりもうまくできないという経験や友達がいないといった孤独感が主観的幸福感を低下させている可能性も明らかとなった。したがって、青年期ASD者も成功・失敗経験と他者との比較、さらには孤独感が主観的幸福感の高低に影響をしていると考えられる。学校教育現場などでは、孤独感を抱かないように他者とつながる支援が求められると言えよう。これら研究成果の一部については、国内や国際学会において発表を行うとともに、学術雑誌に投稿中及び投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
青年期発達障害者を対象として、横断的研究から主に自閉スペクトラム症者の自尊感情とwell-beingの特徴と影響要因について明らかになりつつある。ただし、予定していた影響要因についての量的な研究については、一部未検討であり、次年度以降に検討していく必要がある。応募段階において予定していた海外視察は、文献収集など他の方法により情報の獲得が可能となったことや予算面が厳しかったことから計画を変更し、当初の予定とは異なる方法により研究を進めた。また、自尊感情と主観的幸福感に関する縦断的研究は予定通り、2年目を行った。ただし、研究協力者が1年目に比べて減少している。今年度、学会発表は積極的に行ってきたが、学術論文については投稿中であることもあり、成果発表には至っておらず、次年度以降により積極的に学術論文の執筆などを通して、研究成果を公開していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
青年期発達障害者を対象として、自尊感情と主観的幸福感に関する縦断的研究の3年目の調査を実施し、発達的変化について解明する予定である。また、青年期発達障害者の自尊感情の安定性とwell-beingに対する介入効果の検証を試みる。具体的には、青年期発達障害者に対して、これまでの調査研究などを踏まえて、-1標準偏差以上自尊感情が不安定で低く、well-beingも低い事例に対して、影響要因や心理学研究の成果を踏まえて、新たな心理的支援を試みる。Seligmanら(2005)の性格的な強みをいかした介入プログラムを参考に開発を試み、個別の心理的支援プログラムを本学教育相談室等において実施する予定である。効果測定としては、自尊感情や主観的幸福感等の尺度を用いる。また、3カ年の研究成果を基に、青年期発達障害者の自尊感情の安定性及びwell-beingの支援にかかわるガイドラインを300部作成するとともに、研究成果報告書として100部作成し、関係機関などに配布する予定である。3年間の研究成果については、国内外の学会において発表を行い、学術論文として研究成果をまとめる。併せて、国際誌への投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
アンケート調査及び面接調査の実施にあたり、発送作業の補助やデータ入力にかかわる人件費の効率的運用などから、次年度使用金が生じた。次年度は、研究成果の発表をより一層積極的に行っていく予定であり、国際学会も含めた学会参加の旅費や大会参加費、さらには面接データ及び事例的検討のデータ収集のための旅費、研究成果報告書の印刷費などに使用していく予定である。
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Research Products
(4 results)