2017 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災後に誕生した子どもとその家庭への縦断的支援研究
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16K04840
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
八木 淳子 岩手医科大学, 医学部, 講師 (80636035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桝屋 二郎 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70349504)
松浦 直己 三重大学, 教育学部, 教授 (20452518)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / トラウマ / 早期発見・早期支援 / 母子メンタルヘルス / 行動障害 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度のベースライン調査に引き続き第1回目の追跡調査を行い、岩手・宮城・福島の3県212名の子どもにWISC-Ⅳによる知能検査(フルセット)を実施し、保護者にはアンケートと面接による聞き取りの調査を行った。捕捉率は約90%でデータセットが蓄積されている。 支援としては、4歳児時点で明瞭な認知発達の遅れが認められた子どもに対して、検査結果の丁寧なフィードバックおよび養育相談を実施し、保護者から要望があった場合には、就学の参考資料として詳細なWISC-Ⅳの結果報告書を提供した。また、深刻な精神科的問題を抱えた保護者に対しては医療機関等への紹介を確実に行った。 これまでの統計解析において、子どもの認知発達の遅れや行動・情緒の問題と、保護者の精神疾患罹患率には相関が認められた。特に言語発達の遅れは顕著であった。現在、WISC-Ⅳの検査データ入力が完了し、結果の分析を進めているところである。 本研究成果の発信として、①各県ごとに参加協力保育所や市町村への研究結果報告会を実施した。②第16回トラウマティックストレス学会(2017年6月、東京)シンポジウムにてベースライン調査結果について報告し、アジア児童青年精神医学会(同年8月、インドネシア)において本研究班員4名が参加・報告したシンポジウムでは大きな反響を得た。③岩手県盛岡市において「みちのくこどもコホート研究シンポジウム」を開催し(2017年11月11日)、地元紙(岩手日報)・全国紙(朝日新聞)にも取り上げられた。④本研究の趣旨説明と意義の周知、参加協力者へのフィードバックおよび双方向コミュニケーションの活性化のため、ホームページを開設しニューズレター等随時情報を更新している。http://www.miccageje.org/
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度のベースライン調査の結果を発表し、複数の新聞や地域のニュース番組等で取り上げられるなど、研究の意義や有用な結果について周知されてきた。 今年度に実施した第1回目の追跡調査では、比較的高い捕捉率を維持しながら、WISC-Ⅳによる知能検査を実施できており、そのデータセットが蓄積され現在解析が進んでいる。さらに、その結果を小学校就学前の資料として有効に活用し、ハイリスク児への治療的介入が実施できたことで、保護者や地域の教育機関とのつながりが維持されている。 コホート集団を盤石に維持するとともに、次年度の第2回追跡調査に向けての目処がたった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、第2回追跡調査を実施し、基本的には前年度と同様形式で面接とアンケート調査を行う。子どもの語彙発達について経時的に追跡するためPVT-Rを実施、保護者のメンタルヘルスについてはMINIを実施する。その他のアンケート項目は前年度と同様の内容を継続調査する。 3年間のベースライン・追跡調査のまとめとして、疾患を発症(発見)した時期や寛解した時期、それらに関連する要因を分析し、時間要因を含めた多変量解析を実施する。 ハイリスク児とその保護者に対する支援、保育士に対する後方支援は前年度までと同様に定期的に継続し、3年間のハイリスク児への介入(治療)効果の検討を行う。本研究におけるハイリスク児とは、何らかの発達障害や心理的困難性を有している児を想定するが、多くの研究がそのようなハイリスク児に対する早期発見・早期介入の効果を指摘している。本研究における3~4歳児時点での早期発見・早期介入は相当の効果を示すと期待され、児の発達を支えることによる家族の心理的側面への支援効果も期待される。 3年間の成果をまとめ、次年度以降の長期縦断的研究継続に向けた問題点の精査を行い、コホート基盤の維持や地域の行政機関・教育機関との連携についての具体的方策を立案する。 これらの成果を報告・発表する機会として、東京(会場:東京医科大学を予定)でのシンポジウム開催(2019年3月)を予定する。
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Causes of Carryover |
調査面接員のマンパワー調整に時間を要した分が次年度へ持ち越しとなった。 次年度は追跡調査2年目となるが、対象児が小学1年生となるため、追跡調査に際して教育委員会等関係機関への事前周知を含む新たな環境構築が必要となる。加えて調査会場の借料等も発生する見込みである。 また、次年度が研究最終年度となる事から、積極的に研究成果の発信を進める予定である。
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Research Products
(10 results)