2017 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質分子間相互作用の力学変調と高分解能イメージング
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16K04908
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 雅祥 京都大学, 化学研究所, 研究員 (10346075)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高圧力顕微鏡 / 水和 / 分子間相互作用 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、等方的な力学作刺激である圧力を用いて細胞内で働く分子機械を操作する事で、細胞の形態や活性などを操作できる新しい研究手法を開発することを目的としている。平成28年度は、生体内で生理的に生じている高圧力環境を顕微鏡下で再現し、細胞動態を直視する研究を行った。歯根膜細胞は歯と歯槽骨の間に位置し、垂直に配向することで歯を支持している。この咬歯根膜細胞は咀嚼時において細胞を引っ張る力(伸展力)や圧力といった機械刺激にさらされている。これまでの研究により、歯周組織がうける咬合圧は、通常の食物摂取時においては約10MPa(水深1,000m相当の静水圧)、歯ぎしりにおいては約5倍にも達すると見積もられている。この咬合圧は適当な度合いであれば細胞の活性化や分化に寄与することが知られている。しかしながら、生理的な閾値を超えると、炎症性サイトカインの産生などにより歯周組織の炎症や破壊を惹起してしまう。本研究では高圧力下で歯根膜細胞がどのように力学刺激に応答するのか実時間で可視化する研究を行った。健常な患者から採取した歯根膜細胞を常圧力下で培養し、高圧力顕微鏡下で観察を行った。その結果、20MPa以上の静水圧を負荷すると、歯根膜細胞および、その内部にあるアクチンストレスファイバーの縮小が見られた。常圧力に減圧してから、引き続き同じ細胞の観察を続けたところ基板表面に沿って広がる様子が観察された。この知見は生理的な閾値を超える力学刺激は歯周組織の破壊を促すことを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
生体内にある高い静水圧環境を高圧力顕微鏡下で直視することが可能にする従来にない新しい実験系を創出することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究内容が新たな展開を迎えたことで、今後は医療応用を見据えて、さらなる装置改良を推進していく。
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Causes of Carryover |
特注部品の設計に時間を要し、納品がH30年度になったから
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