2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04972
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
庄司 暁 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20437370)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光放射圧 / 光クロマトグラフィ / カーボンナノチューブ / サイズ効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マイクロ流路と光導波路を組み合わせ、ナノ材料の光駆動・分離の原理の確認と光クロマトグラフィ技術の基礎実験を行う。具体的には、以下に示す5つを大きな課題として研究を行う。(1)ガラスの加熱延伸加工によるマイクロ流路光導波路構造の作製(2)チューブ型光導波路へのレーザー光の導波と光放射圧の確認(3)導波光によって励起されたエバネッセント場による導波路内部の粒子の駆動(4)光放射圧の強さと波長依存性の評価(5)波長選択的粒子抽出システムの構築。 平成29年度は、シリカガラス製マイクロチューブ内に導入した微粒子分散水溶液を、レーザー光の圧力によって駆動する実験を行った。直径約20μmのチューブ型光導波路へ波長1064nmのNd:YVO4レーザー光を入射して導波した。微粒子は、入射レーザー光の強度に依存した速度でほぼ等速直線運動でチューブ内を駆動した。微粒子の駆動は、明視野顕微鏡観察のほか、レーザー光の散乱パターンをCCDカメラでリアルタイムに観察することによって行った。駆動速度と水の粘性抵抗から、微粒子にかかる光放射圧を見積もった。光放射圧は、レーザー光強度依存性にくわえ、微粒子の粒子径、形状、吸収スペクトルによって強く依存することを実験的に確かめた。光放射圧の波長依存性の評価のため、波長可変CWチタンサファイアレーザーを光源として用いた光学系を構築した。また、光放射圧による微粒子の分離・抽出を可能にする新規マイクロ流路の設計と基礎実験を行った。PDMSを材料として用い、シリコン基板上に電子ビーム描画加工によって作製したパターンを転写することで、約50μm幅のマイクロ流路を作製した。流路内に微粒子分散水溶液を等速で流し、側方からレーザー光を導入して微粒子に光放射圧を印加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新得状況はおおむね順調である。当初予定していた課題のうち、平成29年度は(2)チューブ型光導波路へのレーザー光の導波と光放射圧の確認(3)導波光によって励起されたエバネッセント場による導波路内部の粒子の駆動、を実施し、光放射圧のレーザー光強度依存性、粒子のサイズ依存性、形状依存性、吸収率依存性を計測できた。また、(4)光放射圧の強さと波長依存性の評価のための光学系構築、顕微ラマン分光システムの構築に着手している。波長可変レーザーには、大阪大学基礎工学研究科・芦田昌明教授と共同研究を開始し、本研究に最適な光源を得た。単層カーボンナノチューブの分散液を用いた実験にも着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初予定していた課題のうち、(4)光放射圧の強さと波長依存性の評価(5)波長選択的粒子抽出システムの構築に注力する。(4)に関しては、現在構築がほぼ完了した波長可変CWチタンサファイアレーザーを光源として用いた光学系を用いてカーボンナノチューブの駆動を実施する。これまでの実験結果を踏まえて、多層カーボンナノチューブを用いた散乱光の直接観察による駆動実験から行い、装置の時間安定性を確認しながら、単層カーボンナノチューブの駆動を行う。これまでの研究成果から見積もられるレーザー光照射時間は、数時間~15時間程度である。ナノチューブの駆動は、顕微ラマン分光でラジアルブリージングモードを測定することで行う。本実験が計画通りに進めば、(5)の課題が遂行されたこととなる。また、光駆動を原理として粒子を分離・抽出するためのマイクロ流路の開発を継続して行う。単層カーボンナノチューブのほか、金ナノ粒子、半導体ナノ粒子などの駆動も、大阪大学と共同して行っていく。また、光放射圧の理論的考察についても引き続き、大阪府立大学・石原一教授と共同で行い、効果的な波長選択的粒子抽出の原理を開発する。
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