2017 Fiscal Year Research-status Report
深部超解像観察に向けた多光子過程を制御した蛍光顕微鏡の開発
Project/Area Number |
16K04983
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
須田 亮 東京理科大学, 理工学部物理学科, 教授 (80250108)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 深部観察 / 多光子過程 / 蛍光顕微鏡 / 超解像イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、細胞や生体組織の深部で高い分解能の蛍光観察を実現するため、二光子励起蛍光顕微鏡において蛍光標識となる蛍光タンパク質の発光波長を切り替え、さらに意図的に褪色させる光励起法を確立し、これをもとに時空間集光法による広視野二光子顕微鏡を用いて、超解像二光子蛍光イメージング技術を開発することを目的とする。 平成28年度は蛍光タンパク質eGFPの光褪色の速度を観測した。CWレーザーを用いた一光子励起による蛍光発光を観察しながら、励起状態吸収(ESA)に同調した別のCWレーザーを用いて褪色させて、蛍光強度の減衰速度を観測したところ、二つのレーザー光(励起光:473 nm、ESA誘起光:750 nm)の強度比と褪色速度の関係から分光結果と矛盾しないことが確認された。また、両者の遅延時間を変えることにより励起状態吸収の発端となる準位を探索したところ、一重項励起状態、三重項励起状態、その他の励起状態からほぼ同程度に褪色が生じていることが明らかとなった。これより、ESA誘起光の波長を制御することにより、所要の部位およびタイミングで蛍光分子を褪色させることが可能になる。 平成29年度は、前年度に実施できなかったフェムト秒レーザーを用いた二光子励起の実験を行った。二光子励起による蛍光分子の発光を観察しながら、ESA誘起光を用いて蛍光分子を褪色させて蛍光強度の減衰を観測したところ、CWレーザーを用いた一光子励起の実験とほぼ同様の結果が得られた。しかし、ESA誘起光の有無による変化量が小さく、パルス光とCW光の組み合わせに起因する時間的・空間的重ね合わせの問題、あるいは二光子励起過程に特有な経路の存在などが考えられ、現在、条件を整えて確認作業を進めている。また、1分子レベルでの光変換および光褪色を観察するため、二つのCWレーザー光を搭載した全反射照明型顕微鏡を構築し、実験に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全反射照明に二光子励起を適用し超解像観察の模擬実験を行う予定であったが、前術のように二光子励起ではESA誘起光の有無による差異が小さく、その原因の解明に難航している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、まず前年度に実施できなかった全反射照明に二光子励起を適用し、次に時空間集光法を用いた二光子励起法により試料の深部を面状に励起するとともに、顕微鏡下でESA誘起光を照射し、所要の部位の蛍光分子を光褪色させる。これにより新たなスライスの蛍光画像を取得し、深部に向かって蛍光観察と光褪色を繰り返すことを試みる。以上の結果を今後の開発の指針としてまとめる。
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