2018 Fiscal Year Research-status Report
大域的F正則性,ファノ多様体とフロベニウス直像の有限性
Project/Area Number |
16K05092
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
原 伸生 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90298167)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フロベニウス直像 / 正標数 / 5次del Pezzo曲面 / ベクトル束 / 反標準環 / F-符号数 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究において,奇標数の 5次 del Pezzo 曲面の上のある Frobenius 直像について予想を立てたが,本年度においては,この予想を証明した.得られた結果は以下の通りである. 定理. X を奇標数 p の代数閉体上の非特異 5次 del Pezzo 曲面とし,X の反標準直線束を L = O_X(-K_X) とする.非負整数 i, e について,i ≦ q = (p^e-1)/2 が成り立つとき,L^i = O_X(-iK_X) の e次 Frobenius 直像 (F^e)_*(L^i) について,次が成り立つ. (1) (F^e)_*(L^i) は階数 dim H^0(X,L^i) = 5i(i+1)/2+1 の自由層を直和因子にもつ. (2) i=(p^e-1)/2 のとき,(F^e)_*(L^i) は,階数 (5q^2+3)/8 の自由層と,(q^2-1)/8個の階数 3 の直既約ベクトル束 E_{1,1,1/2} の直和に分解する.ここに,E_{1,1,1/2} は,直既約性とある開集合上の分裂条件から唯一つに決定される階数 3 の自己双対的ベクトル束である. この定理の証明においては,二項係数の 4重積の和を成分とするある (q^2-1)/8 次正方行列が法 p の下で正則であることを示す必要があり,この「初等的」な部分が難所となっていたが,整数値多項式を用いた議論によりこれを解決することができた.応用として,奇標数の非特異 5次 del Pezzo 曲面の反標準環 R=R(X,-K_X) の F-符号数(F-signature)が,5/24 であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5次 del Pezzo 曲面の反標準環についての進捗状況は,FFRT性が成り立つか否か,という当初の問題意識から考えると十分なものとは言い難いが,これは,上記の二項係数の関わる組み合せ論的問題の解決が予想外に困難であったためでもあり,これが解決できたことは一定の成果と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
5次 del Pezzo 曲面上の Frobenius 直像について,整数 i が 0≦i≦(q^2-1)/2 の範囲にあるすべての場合について(標数 2 の場合も含め)検討を続ける.また,一般の del Pezzo 曲面,より一般に大域的 F-正則多様体について,(F^e)_*O_X(-iK_X) の最大自由直和因子の階数が H^0(X,O_X(-iK_X)) の次元と一致する条件について考察する.
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Causes of Carryover |
雑誌バックナンバーの購入を予定していたが,当該年度内に手続きできなかったため,次年度分として使用する予定である.
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