2016 Fiscal Year Research-status Report
ユークリッド空間のコンパクト部分多様体のポテンシャルとエネルギーの研究
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16K05136
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
今井 淳 千葉大学, 大学院理学研究科, 教授 (70221132)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Riesz ポテンシャル / 正則化 / 部分多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユークリッド空間のコンパクト部分多様体Mに対し、ユークリッド空間のある点xを固定し、その点xからの距離のz乗をM上積分したものを考える。zの値によっては積分が発散するが、その場合は積分を正則化して有限な値を取り出す。これで得られたものを、Mの点xにおけるRieszポテンシャルと呼び、これをM上積分したものをMのRieszエネルギーと呼ぶ。ここで用いる正則化は、超関数論で知られている、Hadamard 正則化、または解析接続を用いる方法によりなされる。解析接続で得られたものは、多様体Mのベータ関数という。これは、Mが球面および球体のときにベータ関数であらわされるからである。 今年度は、Mのベータ関数からMの幾何学的な情報としてどのようなものが得られるのか、特にベータ関数からユークリッド空間の合同変換を除いどの程度Mが決まるのか、という問題を中心に研究した。得られた成果は以下の通りである。 (1) Mが球面および球体のときのポテンシャルの計算を行い、ポテンシャルを超幾何関数を用いて表わす公式を得た。 (2) 上に挙げた問題を、特殊な場合について解決した。すなわち、部分多様体Mが正の余次元を持ちかつ空でない境界を持つケースを除外する、という仮定のもとで、Mのベータ関数は球体および1,2次元の球面を特徴づけるということを示した。 ただし、(1)は、少なくとも正則化なしで積分が定義できる場合については、手法は異なるものの先行研究が存在したことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の研究計画で挙げた問題、つまり、積分幾何学・凸幾何学で重要な量である、Mの内在的体積は、Riesz エネルギー、およびその半相対版ともいうべきものの留数として現れる、という予想は解決していない。(ここで、Riesz エネルギーの半相対版とは、MとMの境界の直積空間の上で2点間の距離のz乗を積分したものを、zの関数として解析接続を用いて複素平面上の有理型関数に拡張したもののことである。)この点では当初の目標からは遅れをとってしまっているが、その代わりに研究実績の概要に記したような成果を得て、それにより新たな研究の方向性が示唆されたので、全体としてみたら研究自体はおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 上の理由の欄に記した申請書の研究計画で挙げた予想の解決を目指す。 (2) 研究概要で記した、今年度の成果では、部分多様体に、「余次元を持ちかつ空でない境界を持つケースを除外する」という仮定をつけている。この仮定なしに成立するかどうかを調べる。そのためにまず、この仮定が成り立たない例、例えば有界な円筒や半球などのベータ関数の留数を計算したい。ただし、現時点で難しそうな感触である。 (3) Mのベータ関数はユークリッド空間の合同変換を除いてMを決めるのか、という問題を研究する。この問題自体には反例が存在するが、平面の凸領域に限ると、ジェネリックには成立すると予想されるので、その予想を解決したい。積分幾何学やtomographyの結果と、Mellin変換などの積分変換についての事実を用いることを考えている。
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Causes of Carryover |
本課題申請時には想定していなかった予算で、本課題よりも先に使用する必要のあるものが発生したことが主な理由である。具体的には、(1) 平成27年度までの予定だった挑戦的萌芽が、外国送金で問題が発生したため、年度内に修了せず平成28年度までずれ込んだ。(2) 平成28年の3月から、首都大学東京から千葉大学に移ったが、スタートアップに相当する予算が100万円程度つくことが、28年度末に決まった。これらのため、使用した金額自体は当初の予定よりも大きかったものの、当研究課題から使用した額は予定を大きく下回ってしまった。 また、海外共同研究者の来日が、都合により平成29年度にずれ込んでしまったことも理由の一つである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外共同研究者の招へいは、Solanes 氏については9月上旬に来ることが予定されており、もう一人の Langevin 氏についても後期に予定している。これ以外に、自分の、もしくは連携研究者の国内外の旅費に使うことを予定している。現時点で決まっているのは、6月のポーランドでの研究集会である。
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Research Products
(3 results)