2017 Fiscal Year Research-status Report
位相空間論と連続体論を用いたカオス力学系の幾何構造の研究
Project/Area Number |
16K05141
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 久男 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70152733)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 位相力学系 / 幾何学的トポロジー / カオス / 等長変換 / フラクタル / 連続体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、幾何学的トポロジーの主な研究対象であるコンパクト距離空間・可分距離空間とその上の連続写像の力学的・幾何学的性質を、位相空間論・幾何学的トポロジー(特に連続体論)と位相力学系理論およびエルゴート理論を駆使して総合的に研究することである。位相力学系に現れる複雑な不変集合の幾何構造と力学的構造の解明を研究のメインテーマとする。そうした複雑なコンパクト距離空間の幾何構造・力学的構造はたいへん興味深い研究対象である。 本研究の研究実績として以下の結果を得ている。あるカオス的な力学系(たとえば0-次元周期点集合をもつ力学系)において、最近の物理学に登場するダークマターにヒントを得たダーク空間を定義し、全体空間がダーク空間によってほとんど覆われていることを証明した。関数解析への応用として、バナッハの著名な‘等長埋め込み定理’を更に発展させた定理を得た;つまり、任意の可分距離空間はヒルベルト立方体上の関数空間 C(Q)に等長的に埋め込み可能で、さらに可分距離空間上の任意の点有限な等長変換群は C(Q)上の等長線形変換群に自然に拡張される。また、外国人研究者との共同研究で、エントロピー正の力学系は複雑な幾何構造を許容することを証明した。すなわち、正のエントロピーをもつ同相写像を許容するグラフ・ライクな連続体は、分解不可能な連続体を含む。この結果は、エントロピーと分解不可能性に関するこの方面の大きな問題の解決となった。また、一般的な逆極限の幾何構造についての研究を行った。特に、その逆極限の次元についての強力な評価式を得た。ごく最近、正のエントロピーをもつ同相写像を許容するグラフ・ライクな連続体について、最終的な構造定理(幾何学的構造と力学的構造の関連を表示する)を得た。幾何的な構造と力学的な構造の複雑さがバランスよく調和した定理である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
正のエントロピーをもつ同相写像を許容するグラフ・ライクな連続体について、構造定理(幾何学的構造と力学的構造の両方を同時に表示する)を得た。この定理は、カオス・アトラクターが複雑な構造(分解不可能性)をもつという経験的に知られた事実を数学的に証明したものである。さらに、その幾何学的構造(分解不可能性)と力学的な構造(Li-Yorke カオス)が理想的な形で関連していることを証明した定理である。そのカオス性について、エントロピー正が限界であることも示している。この定理はこの方面の大問題を完全に解いたものとなっており、幾何学的トポロジーと位相力学系研究の進展に大きく貢献する結果と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度も平成29年度の基本方針に従い研究を進める予定であるが、研究の進み具合に応じて研究テーマの内容の検討を行い、その時点で必要に応じた連携研究者・分担者の追加など研究計画を弾力的に見直していく予定である。また、平成30年度は研究代表者および連携研究者は国内外の研究集会・国際会議に積極的に参加し、研究発表や研究成果のレビューもできるだけ積極的に行っていく予定である。本研究を進める上で国内外の研究者との研究協力は欠かすことができないものと考えているからである。特に各研究テーマについて内外の研究者との共同研究・討論を更に精力的に行い、本研究をさらに進展させたい
|
Causes of Carryover |
理由:大学業務のため、予定していた外国出張をキャンセルした。 使用計画:国内外の研究集会に更に積極的に参加して本研究の実績を高めたい。
|
Research Products
(6 results)