2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K05191
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
町原 秀二 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20346373)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非線形偏微分方程式 / 初期値問題適切性 / 非適切性 / ノルムインフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
非線形双曲型・分散型方程式の初期値問題の適切性を研究している。適切性とは解の存在、一意性そして初期値への連続依存性である。具体的な方程式はディラック・クライン・ゴルドン方程式を扱った。今回は特に空間一次元での調査となった。空間一次元での取り扱いはもちろん変数が少ないためシンプルな解の表示などが利用できるなど、解析が簡単になる側面もあるが、解が存在する関数空間をソボレフ空間で考えた場合にその指数が負になる場合もあり独特な世界観がある。ソボレフ空間で指数が負になった場合、その埋め込み定理、双線形評価など、実解析的、調和解析的道具としてはまだまだ整備されているとは言い難い状況にある。それら評価式の構築が非線形偏微分方程式の解析の成功の鍵となるため未解決な問題は多々存在する。今回ディラック・クライン・ゴルドン方程式は湯川型と呼ばれる二次の非線形項を含む非線形方程式であるためその双線形評価の詳細な調査そして新しい評価式の構成が必要であった。それを信州大学岡本葵氏との共同研究で大幅に前進させることができた。また同氏とは非適切性の研究も共同で行っている。非適切とは適切の否定であるから上記三つの条件を一つでも破たんさせればよいが今回は初期値への連続依存性を崩す計画を立てた。またさらには初期値ノルムが0に、そして解のノルムが無限に発散するという、より強い形の初期値への連続依存性の否定つまりノルムインフレーションの成立に核心的前進を見せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文を発表することができなかったが研究としては順調に進んでいる。また部分的解決の内容に関して複数回研究集会などで講演を行っており、他の研究者へのアピールも十分に実行できていると言ってよい。また本研究課題に即した内容であるが非線形シュレディンガー方程式の爆発問題に関しても研究を同時進行で行っている。こちらも部分的結果を出し一度研究集会で講演を行った。解の爆発現象は時間大域適切性に対する否定的主張であるので本研究課題に関係している。そしてそこで用いられたコンパクト性の議論は解の適切性の証明に応用が十分に期待できる。つまり非線形分散型・双曲型偏微分方程式の適切性、しいては非適切性に関する研究に役立てることができる。ソボレフ空間がルベーグ空間に埋め込み定理を考えたときにその埋め込みがコンパクトになるのは領域が有界であることの他に、関数を球対称に限定すること、または遠方で一様に発散する重みをつけたルベーグ空間を併用することが考えられる。しかしこれらは空間変数のみの定理であり、今回利用した状況は時間と空間の両方の変数を考慮したものだった。Aubin-Lionsの補題と呼ばれるもので、空間方向の関数空間にはやはり何かしらのコンパクト性の関係を用いることが仮定の条件だったが、今回は遠方で一様に発散する重みをつけたルベーグ空間を併用した。つまり遠方で一様に発散する重みをつけたルベーグ空間の一様有界性を示してAubin-Lionsの補題を応用した。
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Strategy for Future Research Activity |
非線形双曲型・分散型方程式の初期値問題の適切性の研究を推し進める。適切性とは解の存在、一意性そして初期値への連続依存性であり、その否定が非適切性となる。具体的な方程式はディラック・クライン・ゴルドン方程式を扱った。特に空間一次元での調査が主となる。そしてこの問題の最終目標はこの適切性と非適切性で関数空間の条件を完全に分類することである。今回はソボレフ空間を取り扱っているのでその指数の大小で分けることになる。このときその値は負のものも考えるのでその意味で大小であることに注意する。今回の空間一次元ディラック・クライン・ゴルドン方程式はディラック方程式の解とクライン・ゴルドン方程式の解でソボレフ空間をそれぞれ設定するので指数は二つある。また尺度不変性の議論による定まる臨界指数より大幅に大きい指数での非適切性の結果も報告されているため尺度変更による議論では証明が完成しないことは明らかである。新しい技術が待ち望まれる。この問題を信州大学の岡本葵氏と引き続き取り組む。同氏のノルムインフレーションの証明の技術を共同研究で鍛錬し、新しい評価式や議論を構築させる。またディラック・クライン・ゴルドン方程式特有の性質も引っ張り出す必要があると考えている。電荷保存の空間における保存量は存在するがエネルギーに関する正定値の保存量は存在しない。適切性においてコンパクト性の議論は期待できない状況である。非適切性の証明と同時進行で研究していく。
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Causes of Carryover |
差額を正確に0にすることが難しく少額残ってしまった。
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