2020 Fiscal Year Research-status Report
1次元及び高次元複素力学系における implosion の理論とその応用
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16K05213
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
中根 静男 東京工芸大学, 工学部, 名誉教授 (50172359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サドル不動点 / スーパーサドル / fiber Julia 集合 / 形式的共役 / implosion / Lavaurs 写像 / stretching ray / critical portrait |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Polynomial skew product の incoming サドル不動点がスーパーサドルの場合の fiber Julia 集合の挙動についてまとめた論文を雑誌 Proceedings of the American Mathematical Society に投稿して掲載が決定した。 2.Outgoing サドル不動点がスーパーサドルの場合、その不動点での形式的共役に関する標準形は知られているが、その形式的共役が正則になることは一般的には期待できない。Skew product に対して、ある仮定の下で形式的共役が正則共役になるための必要条件と十分条件を与えた。この二つの条件は必要十分条件にかなり近く、しかも判定しやすい。その応用として、標準形と正則共役になる場合は、線形化写像の代わりに正則共役を用いることにより、線形化可能な場合と同様の議論をすることが可能となり、implosion 理論を拡張できることがわかった。 3.固有値が1の放物的不動点を持つ3次多項式に対して、充填 Julia 集合の外での stretching 変形を Lavaurs 写像で引き戻すことにより、充填 Julia 集合の内部まで複素構造を変形することができる。この変形をLavaurs 変形という。Lavaurs 変形によって変形されないような放物的不動点を持つ3次多項式は Fatou vector が整数であるという特徴づけを与えた。そのような写像には stretching ray が着地することはすでに示している。このように、Lavaurs 変形による変形集合は stretching rays の集積点集合と密接に関係するので重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.Polynomial skew product が二つのサドル不動点で線形化可能な場合の fiber Julia 集合の挙動についての結果をまとめた、連携研究者の稲生啓行氏との共著論文が雑誌 Indiana University Mathematics Journal に掲載された。 2.Incoming サドル不動点がスーパーサドルの場合の fiber Julia 集合の挙動について、そのサドル不動点と同じ fiber 上にある他のサドルと outgoing サドル不動点との関係の有無に着目して考察した。それをまとめた論文が雑誌 Proceedings of the American Mathematical Society に掲載決定された。 3.Outgoing サドル不動点がスーパーサドルの場合に、ある仮定の下でその点での標準形への形式的共役が正則になるための必要条件と十分条件を与えた。正則共役が存在する場合には線形化写像の代わりに正則共役を用いることにより、線形化可能な場合と同様の結果が得られることが分かった。 4.Parabolic locus の capture components に集積するような stretching rays の critical portraits を特徴づけることができた。 5.Lavaurs 写像によって stretching 変形を充填 Julia 集合の内部に引き戻すことで得られる Lavaurs 変形によって変形されない写像は Fatou vector が整数であるという特徴づけを与えた。 6.2020年度は感染症流行の影響で学会等が中止になったために国内外の研究者と討論する機会があまりとれなかった。関連する研究者と討論して研究を完成するために事業期間を延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Outgoing サドル不動点での形式的共役について、写像の次数に関する仮定の下で正則になるための十分条件を与えたが、この仮定を除去することができるかどうか検討する。 2.多くの場合、形式的共役は正則ではないが、数値実験を見ると、その場合でも形式的共役が正則になる場合と同様の結果が得られることが予想される。線形化写像や正則共役を使わずに implosion 理論を構築できるか考察する。 3.Lavaurs 変形の変形集合と、対応する stretching ray の集積点集合が一致することを証明する。 4.2個の危点が別々の直接鉢に含まれるような固有値1の放物的不動点を持つ3次多項式を摂動したときの力学系を解明することにより、adjacent components に集積する stretching rays の critical portraits の特徴づけを与える。 5.Stretching rays に関しては、Toulouse 大学の Pascale Roesch との共同研究なので、彼女と連絡を取りながら研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行の影響で参加予定であった学会や研究集会が中止あるいはオンライン開催となったために、予定していた旅費としての支出ができなくなってしまったため。次年度後半に予定されている研究集会に参加する予定である。
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Research Products
(1 results)