2016 Fiscal Year Research-status Report
非線形偏微分方程式におけるパターン形成と界面ダイナミクスの解明
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16K05220
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
奈良 光紀 岩手大学, 理工学部, 准教授 (90512161)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 偏微分方程式 / 擬微分方程式 / 進行波 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は主として以下の研究活動を行った。 1)非等方的(anisotropic)Allen-Cahn方程式における広がり界面(spreading front)の形成と運動に関する研究成果を論文にまとめ、学術誌に投稿した。界面の形状が、拡散の非等方性から定まるWulff図形に漸近する、というのが主要な結果である。証明の要点は、1)弱解の定義と一意存在、2)弱解に対する比較定理、3)Wulff図形を利用した優解(super-solution)・劣解(sub-solution)の構成、4)時刻無限大でのフロント部の整形作用の解析、から成る。この結果を複数の研究集会・セミナーにて発表した。また、上記の手法は、従来から広く研究されている等方的Allen-Cahn方程式に対しても有効であり、その広がり界面(spreading front)の挙動に関しても既存の結果を改善することが出来た。 2)bidomain方程式と呼ばれる,神経パルスの伝播の様子を記述する擬微分方程式について、帯状領域における進行波の安定性・不安定性の解析を進めた。この研究は、東京大学およびミネソタ大学の研究者との共同研究である。この方程式は、Allen-Cahn方程式などの放物型方程式とは異なり、解の比較定理・最大値原理が成り立たない。これがこの問題を解析するうえの困難な点の一つである。平成28年度は、時間局所解の存在や、解の正則性に関する予備的な結果を得た。また、既存研究の結果を利用し、スペクトルの計算を通じて、進行波の非線形安定性・不安定性を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非等方的(anisotropic)Allen-Cahn方程式における広がり界面に関する研究は、ある程度目的のレベルまで達し、論文を投稿するに至った。また、bidomain方程式の帯状領域における進行波の安定性に関する研究も、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究方針に沿って、bidomain方程式における進行波の研究を進める。ある程度まとまった段階で論文として投稿する予定である。また、非等方的(anisotropic)Allen-Cahn方程式の研究の過程で得られた等方的Allen-Cahn方程式における広がり界面(spreading front)に関する結果も近日中に論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
海外から招聘する予定であった研究者のスケジュールが合わず、平成28年度の招聘は次年度へと延期することとなった。そのため、その経費を次年度に繰越す必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外からの研究者の招聘のための経費として使用する。
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