2017 Fiscal Year Research-status Report
階層フィードバックを考慮したマルチスケール数理モデルと疾患力学系の解析
Project/Area Number |
16K05265
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中岡 慎治 東京大学, 生産技術研究所, 派遣研究員 (30512040)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モデル化 / 数理工学 / 数学基礎論 / 免疫学 / 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
数ある疾患の中には、分子 (速いダイナミクス) と組織 (遅いダイナミクス) 間に階層フィードバックが存在し、悪循環によって発症するものがある。本研究では、階層フィードバックを考慮した疾患のマルチスケールダイナミクスの研究を進めている。
平成27年度から継続する形で、平成28年度には階層フィードバックを考慮した疾患のマルチスケールダイナミクスを表現する数理モデル構築に向けて、復数の解析を実施した。
ウイルス感染に起因する疾患を対象とし、サル・ヒト免疫不全ウイルス (速いダイナミクス) と標的細胞 (遅いダイナミクス) 動態に関するマルチスケール数理モデルを構築し、感染成立に関わる要素 (ウイルスの増殖率や感染率など) のうち、どの要素がもっとも病原性の違いに関係するかを数理モデル・シミュレーションとデータ解析によって明らかにした (成果・論文 1)。癌に対する免疫応答 (速いダイナミクス) と癌の突然変異による適応的な免疫回避機構 (遅いダイナミクス) を記述した数理モデルを構築し、癌の適応的変化が免疫応答を逃れる上で癌の生存上有利になる理論条件を導出した (成果・論文 3、責任著者)。ヒト T リンパ球白血病ウイルス (HTLV-1) のタンパク質発現 (速いダイナミクス) と細胞増殖 (遅いダイナミクス) の双方を考慮したマルチスケール数理モデルを構築し、階層間フィードバックの影響がウイルス感染維持に必要であることをシミュレーションによって示した (成果・論文4、責任著者)。抗生物質投与によるバクテリア群集動態の変化を記述した数理モデルを構築し、詳細な数理解析を行った (成果・論文 5、責任著者)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では、5本の論文が受理された。当初想定していた階層フィードバックを考慮したマルチスケール数理モデルを様々な疾患を対象として解析が進んだのみならず、細胞内の分子ダイナミクスに関わる因子のデータ解析についても、研究が進捗した。
このため、予定以上に研究が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた成果を元に、平成 30 年度は、以下の課題に取り組む: [1] ウイルス感染に起因する疾患では、H29年度までに取り組んだウイルスとは異なるウイルスにおいても、同様にマルチスケール数理モデルを構築して解析を行う。多種類のウイルスを扱うことで、ウイルス特有の生活史や宿主との相互作用の違いも含めた、より一般的かつ汎用的なマルチスケール数理モデルの構築を進める。
[2] H29年度では、創傷・治癒過程の数理モデル構築において重要な細菌種の候補をデータ解析から選定したので、H30年度ではこれら細菌種を変数とする細菌群数理モデルの構築と解析を進める。
[3] 上記の予定 [2] と並行して、H30年度では、創傷・治癒過程の数理モデル構築を進める。外的要因である細菌の影響も含めた分子 (速いダイナミクス) と組織 (遅いダイナミクス) 間に階層フィードバックの数理的性質について検討を進める。
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Causes of Carryover |
本年度は 1,414 円余る形となった。1,414 円は、計画通り予算を使用したが、どうしても制御できなかった残額である。1,414 円は、平成30年度に物品購入等に充てる予定である。
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Research Products
(9 results)