2016 Fiscal Year Research-status Report
分子輝線観測による大質量星なしクランプ内部での分子雲コア形成過程の解明
Project/Area Number |
16K05292
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
酒井 剛 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (20469604)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 星形成 / 大質量星 / 分子雲 / 星間分子 / 重水素濃縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
大質量星の形成過程を明らかにするためには、その初期状態を理解することが重要である。しかし、最近まで、大質量星形成以前の状態にある分子雲クランプのサンプルが少なく、大質量星形成の初期状態は未だ明らかにされていない。最近、Traficanteら (2015) は、Herschel 望遠鏡による銀河面サーベイのデータから、大質量星形成を起こす可能性が高く、かつ星形成を伴わないと考えられる分子雲クランプ、171 天体を同定した。我々は、それら分子雲クランプから、距離が5 kpc以内、質量 > (1300(半径/pc)1.33)Msun の条件を満たす55 天体を選び、野辺山45m望遠鏡を用い、DNC J=1-0, HN13C J=1-0, SiO J=2-1, N2D+ J=1-0, H13CO+ J=1-0, H13CN J=1-0輝線のサーベイ観測を行った。観測の結果、55 天体中51天体でHN13C輝線を検出し、32天体でSiO輝線を検出した。SiOが星形成に起因すると考えると、多くの低温大質量クランプで既に星形成が起きていることを示唆している。さらに、DNC/HN13C比を見ると、同じような温度 (10 K) にある天体でも、その値に有意なばらつきがみられた。このばらつきの原因として、分子雲クランプの形成タイムスケールの違いなどが考えられる。さらに、この観測で得られた結果をもとに、DNC/HNC比の異なる8天体を選び、ALMAを用いた観測提案を行っている。今後、野辺山45m望遠鏡の結果をもとに、マッピング観測などさらに展開していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野辺山45m望遠鏡を用い、大質量かつ低温な分子雲クランプ、55天体を観測した。水素濃縮度(DNC/HN13C比)の多様性など、興味深い結果が得られた。野辺山45m望遠鏡で得られた結果は、今後のALMAなどを用いた観測計画立案などにも大きく役立つものであり、おおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
野辺山45m望遠鏡で得られた結果をもとに、ALMAに観測提案中である。今後、ALMAのデータが得られれば、分子雲クランプ内部の個々の分子雲コアの重水素濃縮度を明らかにし、大質量分子雲クランプ内部での分子雲コア形成のタイムスケールを見積もることができる。また、分子雲クランプ内部のホットコア天体における重水素濃縮度の違いについても、新たに着目し、研究を進めていく。最近の我々の観測から、重水素化分子の存在量がホットコアごとに異なる可能性が示唆された。このことをより詳しく調べるため、ホットコアに対する重水素化分子輝線のサーベイ観測を行う。得られた結果は、速やかに論文として報告する。
|
Causes of Carryover |
出張旅費を他財源から支出できたため、旅費分を次年度に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
日本天文学会への旅費として使用する。
|
-
[Presentation] Deuterium Fractionation in the Earliest Stages of High-Mass Star Formation2016
Author(s)
Sakai T., Furuya K., Sanhueza P., Sakai N., Hirota T., Aikawa Y., Watanabe Y., Foster J., Jackson J.M., Yamamoto, S
Organizer
Workshop on Interstellar Matter 2016
Place of Presentation
Hokkaido University(Hokkaido, Sapporo)
Year and Date
2016-10-19 – 2016-10-21
Int'l Joint Research / Invited
-