2016 Fiscal Year Research-status Report
荷電レプトン質量式が示唆したTeVスケール物理の探究
Project/Area Number |
16K05325
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小出 義夫 大阪大学, 理学研究科, 招へい研究員 (40046206)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 真人 京都産業大学, 益川塾, 研究員 (70585992)
山下 敏史 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90622671)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 素粒子論 / 荷電レプトンの質量 / ファミリーゲージボゾン / 統一模型 / 稀崩壊探索の現象論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、荷電レプトンの質量公式が示唆するファミリー対称性を擁する模型の改良・発展、そして、その実験検証の可能性検討を目的とする。 昨年度、フェルミオンの質量構造を理解する新たな試みとして、世代に依存したパラメーターとして荷電レプトン質量の観測値、そして、世代に依存しないわずか6つのパラメーターを用いてクォークとニュートリノの質量行列を観測値とほぼ無矛盾にもたらす模型を提案した (Koide-Nishiura, Physical Review D, Vol.92)。今年度、その模型をより現実的なものへと発展させた (Koide-Nishiura, Modern Physics Letters A, Vol.31)。具体的には、数学構造$U(3) \times U(3)'$に基づく素粒子模型をベースに、Rチャージと呼ばれる量子数を適切に割り当てることで、模型のダイナミクスを記述するポテンシャルの構築に成功した。 また、ファミリーゲージ模型の検証手段の1つとして、ミューオン-電子転換探索に注目し、本模型に対する検証感度を調べた (Koide-Yamanaka, Physics Letters B, Vol.762)。ミューオン-電子転換探索実験で用いられる様々な原子核ごとに、本模型におけるミューオン-電子転換率を算出し、将来実験の検証可能性を定量的に示した。近未来のミューオン-電子転換探索実験において、U(3)ゲージ対称性模型を確立、または、完全に棄却できることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に記した研究を遂行し、それを論文雑誌掲載という形で発表することができた。さらに、いくつかの研究会にて講演し、さらなる模型の改良・検証に繋がる議論を研究会参加者と交わした。こういった成果を基に、本研究課題は順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に続き、ファミリーゲージ対称性を擁する模型の改良・発展に関する研究と、その実験検証を並行して進める。 上述の研究 (Koide-Nishiura, Modern Physics Letters A, Vol.31) において、$U(3) \times U(3)'$対称性は2つのスケール$\Lambda$、$\Lambda'$で破れる。これらのスケールはニュートリノ・クォークの質量行列を導くうえでカギとなる。これらのスケールの値を決めるダイナミクスについては議論の余地が残っている。模型の発展の1つの方向性として、これらスケールの理解を目指す。 一方、模型検証に関し、2017年にLHC実験から報告された興味深い現象に目を向けてみる。LHC実験はB中間子の2つの崩壊反応を測定した: (1) $B \to K \mu \mu$ (2) $B \to K e e$。既知の理論計算に基づくと、これらの反応はおおよそ同じ割合で起こる。ところが、測定が示した結果は、(2)に比べ(1)の割合が3割ほど小さいというものであった。本課題が研究を進めるファミリーゲージ模型はまさにこういった現象をもたらす構造を持っているため、定量的考察を行ない、模型の検証を進めていきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
購入予定であったパソコンを安く仕入れる事が出来たため
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定の消耗品を増額する
|