2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05367
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐川 弘幸 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 客員主管研究員 (50178589)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 荷電交換反応 / Gamow-Teller巨大共鳴 / 2重β崩壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
2重電荷交換反応(Double Charge Exchange Reaction, DCEX)は、1970年代からパイオンを用いた2重荷電が行われてきた。その中で、2重アイソスピン相似状態や2重双極子型巨大共鳴などが明らかにされている。一方、近年の不安定ビームや重イオンを用いる加速器技術や測定器技術の大きな進歩により2重電荷交換反応の精度の良い観測可能性が大きく開かれた。特に、重イオンビームを用いた反応により、最近2重ガモフーテラー励起状態やテトラニュートロン状態の観測が報告されている。一方、2重電荷交換反応によって明らかにされる物理を探る理論的枠組みは、核反応理論も核構造もまだほとんど手つかずの状態である。本研究では、2重電荷交換反応により明らかになる、2重アイソスピン相似状態、2重ガモフーテラー励起や2重スピン双極子励起状態などのスピンーアイソスピン励起を理論的な研究を目的とする。2重電荷交換反応により集団励起状態の様々な新しいモードが観測されつつあり、原子核構造及び反応理論の発展が必要になっている。微視的理論として、対相関も取り入れたエネルギー密度関数を用いた平均場近似としてハートリーフォックーボゴリュウボフ(HFB)理論及び準粒子乱雑位相近似(QRPA)模型を基に、2重電荷交換反応で観測されうる集団励起状態を記述する理論的枠組みを構築している。平成28年度は、2重電荷交換反応で励起される状態を記述するプログラム作成に取り組んだ。また、上記の微視的計算で検証される集団運動状態の和則を様々の原子核で検討し、2重荷電反応のユニット断面積の確定の可能性に言及した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は2重電荷交換反応励起状態へのQRPAモデルの計算機アルゴリズムおよびプログラムの作成に取り組んだ。対相関を取り入れた自己無撞着(self-consistent)なHFBプログラムを基礎に、2重電荷交換反応に応用可能なQRPA及びCXQRPAコードを作成する。この研究には、Skyrme型エネルギー密度関数に基づくHFB、QRPAのプログラムおよび数値計算のが必要である。この研究は、微視的理論に基づくモデルを構築しQRPAのプログラム作成を進めた。 2重電荷交換反応励起状態計算コードの2重スピンアイソスピン励起状態への応用として、2重電荷交換反応励起状態プログラムを、まず2重閉殻の48Caに応用し、対相関のない原子核での2重アイソスピン相似状態に対するプログラムの有効性を確立した。さらにこの原子核で、2重ガモフーテラー励起及び2重スピン双極子励起を計算し、2重巨大共鳴の存在を探り、最近得られた2重電荷交換反応の実験と比較しつつある。さらに、中性子開核であるSn同位体に応用する準備を進めている。その中で、対相関の役割及び重い原子核での集団励起機構を探理、5重項の対称性を研究する準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2重電荷交換反応によって明らかにされる物理を探る理論的枠組みは、核反応理論も核構造もまだほとんど手つかずの状態であったが、我々は、これまでに発展させてきた、対相関も取り入れたエネルギー密度関数を用いた平均場近似としてのハートリーフォックーボゴリュウボフ理論及び準粒子乱雑位相近似(QRPA)模型を基礎として、新しい理論枠組みを構築し、2重電荷交換反応で励起される状態を記述するプログラム作成をほぼ終了した。この応用として、軽い核から中重核また重い核を含む広い領域での2重ガモフーテラー励起状態や2重アイソスピン相似状態や2重スピン双極子励起状態などのスピンーアイソスピン励起の理論的な研究を進める。特に、平成29年度はτー型及びτ+型荷電交換による1重及び2重スピンーアイソスピン励起状態を自己無撞着HFB+電荷交換QRPA理論 (CXQRPA)により計算し、アイソスピン5重項の対称性を検証す。軽い核から中重核また重い核を含む広い領域での2重ガモフーテラー励起状態や2重アイソスピン相似状態や2重スピン双極子励起状態などのスピンーアイソスピン励起を理論的に研究する。また複合領域にわたる課題として、 2重ガモフーテラー励起状態及び2重スピン双極子励起状態はニュートリノの質量を決める零ニュートリノ型2重β崩壊と相補的な関係にあり、非常に弱い遷移確率の2重β崩壊と非常に大きな確率遷移を持つ巨大スピンーアイソスピン励起を同じ理論模型で定量的に解析することにより、原子核物理だけでなく素粒子物理や宇宙物理にも大きなインパクトを持つ研究を進める。
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