2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05367
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐川 弘幸 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 客員主管研究員 (50178589)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Gamow-Teller遷移 / 荷電移行反応 / 遷移和則 / エネルギー密度関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究では、2重電荷交換反応により励起される2重スピン-アイソスピン依存励起状態を記述するためのHF理論及び電荷交換型及び電荷交換なしの乱雑位相近似(CXRPA,non-CXRPA)模型、さらにそれを発展させた対相関を取り入れた電荷交換型及び電荷交換なしの準粒子乱雑位相近似(CXQRPA,non-CXQRPA)模型に基ずく、理論枠組みを構築し高速計算機用アルゴリズム及びプログラム作成を行って来た。
この汎用性の高いプログラム開発により、様々な原子核の2重スピン-アイソスピン励起すなわち、2重ガモフ-テラー励起及びスピン双極子型励起巨大共鳴を予言することを目指している。また、理研やイタリアのINFNの実験グループとの共同研究を行い、具体的は実験的な提案をも視野に入れている。
この自己無撞着な理論計算プログラムに2体クーロン力も組み入れることによりアイソスピン多重項の対称性を探る枠組みにも取り組んでいる。また、アイソスカラー型スピン3重項対相関及ぶテンソル相互作用もQRPAプログラムに組み入れる取り組みを進めた。2重スピン-アイソスピン励起状態の実験で得られる定量的な遷移確率を与えるには、このような相関が重要である。さらに、対相関相互作用を取り入れたSkyrme型エネルギー密度関数を用いたHFBおよびQRPAプログラムに、粒子ー振動結合効果(PVC)を取り入れたプログラムを開発する理論的な枠組みを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2重電荷交換反応励起状態プログラムを、まず2重閉殻の48Caに応用した。すなわち対相関のない原子核での2重アイソスピン相似状態に応用し、プログラムの有効性を確立する予備的な計算が終了した。さらにこの原子核で、2重ガモフ-テラー励起及び2重スピン双極子励起を計算し、2重巨大共鳴の存在を探り、最近得られた2重電荷交換反応の実験と比較して、理論計算の信頼性を検討した。さらに中性子開核であるSn同位体に応用するために、対相関を入れた準粒子RPAの開発を始めており、アルゴリズムの構築および計算機コードの構築に取り組んでいる。
近年N=Z近傍核のスピン-アイソスピン励起状態へのアイソスカラー型スピン3重項対相関とテンソル力の重要性が指摘されており、2重β崩壊への影響も大きいことが知られている。平成28年度開発したアイソベクトル型対相関を取り入れた2重電荷交換反応励起状態計算コードにこのアイソスカラー型対相関及ぶテンソル相互作用を組み入れた。その計算コードにより、2重ガモフ-テラー励起及び2重スピン双極子励起へのアイソスカラー型対相関の効果、またアイソベクトル対相関との競合やテンソル力との共存過程を調べることも進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の一つの大きな課題として陽子-中性子移行型2重電荷交換反応に於ける2重スピン-アイソスピン励起状態の研究とアイソスピン多重項の対称性の検証を行う。陽子-中性子移行型1重電荷交換反応によるスピン-アイソスピン励起状態は、N~Z近傍核では、中性子-陽子移行型励起と同程度の遷移強度を持ち、アイソスピン対称性の検証に重要な役割を果たしてきた。陽子-中性子移行型2重電荷交換は、(18O,18Ne), (8He,8Be), (14C,14O)反応で可能であり2重スピン-アイソスピン励起状態の観測が期待される。陽子-中性子移行型型と中性子-陽子移行型の1重及び2重スピン-アイソスピン励起状態の比較により、アイソスピン5重項の対称性の検証が可能になる。
今年度の研究では、自己無撞着なHFB+CXQRPA理論に2体クーロン力を組み入れアイソスピン5重項の対称性を、まずアイソスピン相似状態で理論的に研究し、実験との協力的な作業によりアイソスピン対称性の新しい次元を確立する。この研究には、2重スピンアイソスピン励起状態を記述する計算機プログラム製作が重要な役割を果たすが、これはすでに開発済みである。
我々はinternet等を通じてのでの国際研究networkにより、当該研究communityからのサポートを得る体制づくりを行っており、研究の理論計算で予言された物理量の実験的な検証の可能性を、理化学研究所やイタリアのINFN原子核研究所の原子核実験研究者との共同で実現を目指す。
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Causes of Carryover |
端数が生じたため。消耗品に使用。
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