2021 Fiscal Year Research-status Report
マルチフェロイック物質の磁化プラトーに対する不純部効果
Project/Area Number |
16K05420
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
黒江 晴彦 上智大学, 理工学部, 准教授 (40296885)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 反強磁性スピン鎖 / 不純物効果 / 磁化プラトー / 超強磁場物性 / ファラデー回転法 / パルス強磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
歪んだ四面体磁性鎖を持つマルチフェロイック物質 Cu3Mo2O9 の強磁場物性や置換効果を研究している。連続固相反応法で育成した高品質な単結晶試料を用いて,磁性や誘電性の測定において良好な結果を得ている。特に,不純物置換試料を育成する際には,固相反応をベースとしたこの方法には,仕込み量と結晶の組成が対応するメリットがある。しかし,この方法で作った結晶には,直径数μm~数十μmの小さな穴が開くため,光学測定が困難である。この小さな穴は高温・高圧下でのアニール処理では除去しきれない。 光学測定を使った強磁場磁化測定には,セルフフラックス法を用いて液相から育成した単結晶試料が必要である。過去に育成した単結晶試料の,ファラデー回転法による超強磁場中の磁化測定を行った(2018 年実績)。残念ながら,試料の冷却に問題があったと判断した。試料周囲の遮光に使った素材が強磁場印加時に絶縁破壊を起こし,渦電流により発熱したものと判断し,その後はセルフフラックス法を使った単結晶育成を目指して現在に至っている。 試料の育成に必要な電気炉,熱間等方加圧装置,グローブボックスを2021年度終了までに準備した。不純物置換系の測定に必要な液体ヘリウムの確保が急務の為,ヘリウムの再凝縮装置を整備した。新型コロナウイルス感染症の影響で納品が約一年程度遅れ,今の所は不純物置換系の強磁場磁化測定に必要な予備実験(磁化測定)まで至っていない。試料のキャラクタリゼーションが遅れたため,不本意ながら,研究が進まなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初予定では研究が終わっているはずであったが,一つ目のマイルストーンとして設定した純粋な試料での磁化測定も終わっていない段階なので「遅れている」と判断している。サンプル育成・評価・加工・研磨に苦労を重ねているが,研究室移転に伴う装置の不調や新型コロナウィルスの感染拡大による研究に必須なヘリウム再凝縮器の整備の遅れ,液体ヘリウムの逼迫等により,研究が思うように進んでいない。 本研究には,不純物置換試料での強磁場物性が目標として含まれている。現在問題となっているのは,強磁場物性を行うための良質の単結晶が必要となるものの,そのような試料の結晶内には小さな穴が存在するために,光学測定を行う事ができないというジレンマである。このジレンマは「セルフフラックス法で不純物置換系の単結晶試料を育成する」ことによって解消されるが,セルフフラックス法での不純物置換系の育成は一般的に難しく,特に不純物置換系では,仕込み量と結晶内の組成の間には食い違いがあるのが一般的で,組成の同定には大変な手間がかかる。幸い,連続固相反応法で育成した試料を用いて研究した,不純物置換量による物性変化のデータが多数あるので,これらと比較したうえで,セルフフラックス法で育成した試料での物性評価を行うことが,クリアすべき課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度にも関わらず,試料の育成作業がまだ必要であることは大変に残念な事である。昨年度に再立ち上げをした電気炉や熱間等方加圧装置を調整しながら,せめて純粋な試料の磁化曲線が測定できるよう,マシンタイムに合わせて試料を加工する。 液体ヘリウムの確保が最重要課題であり,場合によっては他の研究機関に磁化測定の依頼をする事も考えている。
|
Causes of Carryover |
実験に必要なサンプルを作るための装置の不具合を修理し,整備をする必要があったが,米国での新型コロナウイルス感染症拡大のあおりを受け,整備に予想をはるかに超える時間がかかったため,研究を中断した。2022年1~3月の間に,測定に必要な量の液体ヘリウムの確保ができず,次年度使用額が発生した。 現在,液体ヘリウム入手を巡る状況は更に困難を極め,価格も不透明な部分があるのだが,当該助成金を使って購入し,磁化測定に使う予定でいる。入手が不可能であると判断した時には,他研究機関の装置を利用するが,その時の旅費や追加の試料の原料費などに充てる。
|