2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05424
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
家田 淳一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (20463797)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スピン起電力 / スピントルク / 反強磁性体 / 磁壁 / 反強磁性共鳴 / ドップラー効果 / スピン流 / 国際共同研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、磁性体の磁化ダイナミクスが電力を生み出す機構である「スピン起電力」の基礎学理を追求し、その出力増大の指針を理論的に見いだすことを目的としている。本年度は以下の課題を実施した。 ・強磁性体において研究されてきたスピン起電力を反強磁性体の場合に理論拡張した。反強磁性体における副格子磁化の運動と副格子間の伝導電子の飛び移りを系統的に取り扱う摂動展開手法を開発し、先行研究ではその存在が否定されていた反強磁性体の磁化運動からの電力生成が可能であることを理論的に予言し、磁壁運動と反強磁性磁気共鳴に対する起電力の公式を得た。マインツ大との国際共同研究(Electric voltage generation by antiferromagnetic dynamics, Y. Yamane, J. Ieda, and J. Sinova, Phys. Rev. B Rapid Communications)。 ・上記の研究で開発した理論手法に基づき、反強磁性磁気テクスチャーに対する電流の影響を調べ、反強磁性体におけるスピントルクの一般形を導出した。これまでに行われた研究では議論できなかった物質パラメータへの依存性を明らかにし、スピントルクの効率を評価する式を導出した。また、反強磁性スピン波の電流によるドップラー効果の存在を理論的に予言した。マインツ大との国際共同研究(Spin-transfer torques in antiferromagnetic textures: efficiency and quantification method, Y. Yamane, J. Ieda, and J. Sinova, Phys. Rev. B)。 ・Oxford Univ. Pressから出版されている教科書の版改訂に際し、スピン起電力の章を新たに書き起こした。今世紀に発見されたスピン起電力に関するこれまでの研究成果を網羅した入門的解説を提供している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に掲げたスピン起電力の出力増大に向けて、反強磁性体を用いる新しい切り口を提出した。スピントロニクスの可能性を反強磁性体に広げる取り組みは、スピンを介したエネルギー変換の効率を高めるためにもさらに発展させる余地がある。
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Strategy for Future Research Activity |
反強磁性体に対するモデル計算で示したスピン起電力とスピントルクの理論予言を、数値計算に組み込み解析を進める。また、ラシュバスピン軌道相互作用の効果を取り入れた理論構築を行い、強磁性体の時に見いだした垂直磁気異方性の発現機構が反強磁性体においてどのように振る舞うかを調べる予定である。
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Research Products
(10 results)