2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K05424
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
家田 淳一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (20463797)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピン起電力 / スピン軌道相互作用 / 磁壁 / 磁気スキルミオン / ジャロシンスキー守谷相互作用 / 電界効果 / 反強磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピン起電力の出力増大に向けて、スピン軌道相互作用と磁気交換相互作用を組み合わせた系の理論解析を行った。具体的には、磁性多層膜のような反転対称性の破れた強磁性体に存在する磁気スキルミオンが並進運動した際のスピン電場を導出し、様々なスピン軌道相互作用の組み合わせに対する解析的な表式を得た。本成果は論文投稿して査読中であり、その内容をIrelandで行われた第53回黎明国際研究会“New Excitations in Spintronics”において口頭発表した。 近年、反強磁性スピントロニクスに注目が集まっている。東北大学電気通信研究所主催の国際会議“New-Concept Spintronics Devices”と題する研究会において、反強磁性体におけるスピントルク効果に関する招待講演を行った。また、日本磁気学会からの依頼により、反強磁性体におけるスピントルクとスピン起電力に関する解説記事を執筆した。 強磁性薄膜の中を高速に伝播する磁壁の運動を電圧で制御する研究を東大・電通大と共同で実施した。磁壁の高速駆動は磁気メモリの高性能化に不可欠であり、電圧印加による制御手法はそれを省エネルギーで実現するものとして期待されているが、これまでわずか秒速1ミリメートル以下という極めて遅い速度領域の実証報告しかなかった。本研究ではそれよりはるかに高速な秒速100メートル超の領域において、磁壁速度の電圧変調に成功した。被評価者は、得られた実験結果が、強磁性薄膜の界面に生じる反対称交換相互作用(ジャロシンスキー・守谷相互作用)の電界制御で説明できる事を理論的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に掲げた研究内容のうち、磁壁や磁気スキルミオンのような磁気構造の運動とスピン軌道相互作用の組み合わせで生じる効果を特に解明し、外部発表を行った。このほか、招待講演等を通じて国内の反強磁性スピントロニクスに関する研究ネットワークを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的であるスピン起電力の出力増大に向け、基礎的な要素が揃ってきた。これらの研究要素を組み合わせることで、出力電圧をこれまでの十倍にするという数値目標の達成を目指す。同時に、スピン起電力を生成するための新規材料として、反強磁性体を中心にこれまでのコリニアな磁化配置からノンコリニアな磁化配置に対象を拡大することで更なる研究展開に結びつける。
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Causes of Carryover |
予定していた物品購入が安価で済んだため。計画に大きな変更はなく、次年度の物品費として使用する。
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Research Products
(13 results)