2017 Fiscal Year Research-status Report
強相関量子多体系の相の分類と場の理論における量子異常
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16K05469
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
押川 正毅 東京大学, 物性研究所, 教授 (50262043)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子多体系 / Lieb-Schultz-Mattis定理 / 量子ホール効果 / 量子異常 / 量子スピン鎖 / SU(N)対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、周期ポテンシャル中の量子多粒子系のホール伝導度について研究を進め、論文をまとめた。[Y.-M. Lu, Y. Ran, and M. O., arXiv:1705.09298] 主要な結果として、単位胞あたりの磁場、単位胞あたりの粒子数、ホール伝導度、(トポロジカル秩序系における)背景エニオン電荷、の間に成立する普遍的な関係を導いた。 また、前年度に出版した論文[S. C. Furuya and M. O., Phys. Rev. Lett. 118, 021601 (2017).]におけるSU(2)量子スピン鎖における量子異常の議論を、より系統的に1次元のSU(N)スピン鎖に適用した研究をYuan Yao氏およびChang-Tse Hsieh氏と共同で取り組んだ。その結果、SU(N)対称性を持つ1次元の量子相がt' Hooft量子異常によって特徴づけられることがわかった。これは、単にSU(2)をSU(N)に一般化しただけではなく、量子異常の量子多体系への応用について新たな観点を導入し、これまでSU(N)スピン鎖について得られていた部分的な知見をまとめるとともに拡張するものである。この成果については論文を準備中であり、近日中に発表する。 また、エンタングルメントを含め多くの問題に適用可能な、スペクトルからハミルトニアンを機械学習によって推定する手法を開発し、論文を出版した。特に、1次元ハバード模型の低エネルギースピン有効模型を非常に高い精度で導くことができることを示した。 さらに、量子スピン系の基底状態をSz基底で展開した係数に関するShannon-Renyiエントロピーのスケーリングに関する研究、および、多粒子系における量子統計と基底状態エネルギーの関係に関する詳細な研究をまとめ、論文を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
周期ポテンシャル中の量子多粒子系のホール伝導度についての研究で得られた一般的な制約は、量子多体系の相を分類する新たな指針として非常に注目されており、本年度中にも国際会議でこの成果について3回の招待講演を行っている。また、既にこの研究を発展させたいくつかの論文も他グループによって発表されている。 また、本年度に開発した機械学習によるハミルトニアンの推定手法も世界的に注目されており、我々の手法を応用した論文が既に他グループによって発表されている。これらの成果は、期待された以上のものであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
SU(N)スピン鎖についての第一論文はほぼ完成しているが、まずこの論文をまとめて発表することに注力する。その後、第一論文では議論しきれなかった応用や、数値的検証の提案についても研究を進める。 周期ポテンシャル中の量子多粒子系のホール伝導度についての成果は、Lieb-Schultz-Mattis定理の新たな一般化とみなすこともでき、場の理論における量子異常との関連についても新たな方向性を与える。平成30年度以降は、この観点からの研究を推進し、理論物理学における新しい概念を開拓したい。
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Causes of Carryover |
国際ワークショップへの出席や、米国における共同研究者のYing Ran氏、Tarun Grover氏を訪問して共同研究を推進するための旅費を予定していた。これらの出張は実行したが、旅費の一部先方負担を含め節約が可能であったので、次年度使用額が生じた。これは、次年度の海外共同研究者の訪問もしくは招聘に利用する計画である。
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