2019 Fiscal Year Research-status Report
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16K05523
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
野瀬 真規子 (野々村真規子) 日本大学, 生産工学部, 准教授 (20333320)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フェーズフィールド法 / 細胞分裂 / 細胞運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の細胞生物の分野における実験技術の進歩は目覚ましく、細胞内部や細胞膜上における分子局在位置を、時間を追って計測できるまでになっている。それらの計測された実験データから、細胞の運動はもちろん、機能をもつ器官や組織などの形態形成までをつなげて理解する手段として、数理的アプローチが重視されるようになってきた。そこで、我々は国内外の実験グループに提供された実験データをもとに、細胞分裂に関する研究と細胞の集団運動に関する研究の2軸で研究を進めている。 細胞分裂の研究では、分裂のタイミングや分裂面の方向が重要とされる、オルガノイドと卵割に焦点を当てている。ちなみにオルガノイドとは、人工的に作られた器官に似た細胞集団のことである。細胞分裂や細胞分化などを表すことができる多細胞のフェーズフィールドモデルを用いて、分裂面を決定する因子の空間分布などが、細胞一つ一つの形状はもちろん、細胞集団全体の形状にどのような影響を与えるかを調べている。当該年度では、主にオルガノイド内部にできるルーメン領域の成長則について調べた。 基板上に接着した細胞は、基板の性質などによって、その運動性を変えることが知られている。連携研究者から提供された実験データを用い、機械学習や粒子画像流速測定法(PIV)など、様々な方法を使って集団運動の特性を的確に表す指標を模索している。当該年度ではPIVで求めた移動ベクトルの相関距離が上皮間葉転換の指標となることを論文にまとめ発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、平成31年度には64細胞期以降の卵割の数値計算とアクチン重合モデルのフェーズフィールドへの組み込みを行う予定であった。研究を進めるうちに、分裂面の決定因子の空間分布を、時間的に移動させる必要があることがわかってきた。しかしながら、手元にある実験データが不十分で、どのように数理モデルに取り入れるのが現実的なのかが判断し難い状況となっている。また、アクチン重合のフェーズフィールドへの組み込みについては、既存のアクチン重合モデルを使って、数値計算はできるようになったものの、計算コストが非常に高く、膜の変形がみられる空間スケールで計算するにはGPGPUマシンでもかなり時間がかかることがわかってきた。 そこで、当初の計画を変更して平成31年度は、実験データが十分あり、また細胞の分化の影響があまりない、と考えれる初期のオルガノイド形成について数値計算を行なった。オルガノイドの成長則を数値的に調べることでモデルの改良やパラメータ推定を行なった。 また、細胞運動追跡として、これまで使っていたPIVでは細胞一つ一つの特徴を捉えることが難しいため、このPIVと平行して、フェーズフィールドモデルや機械学習による細胞追跡を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はコロナ流行のため、新しい実験データが提供されない可能性がある。それを前提に、研究を進めていく必要がある。 アクチン重合については、既存のフェーズフィールド法での細胞移動の数値計算で考えてられているアクチンの項と、アクチン重合モデルの間を繋ぐモデルを提案することを目指す。フェーズフィールドモデルに取り入れた数値計算を行えるようにしたいと考えている。 細胞分裂に関しては、まずは平成31年度に続いてオルガノイドの研究を進める予定である。これまでの実験からわかった事実を踏まえ、細胞内での局在をモデリングする。そのモデルを応用することで、卵割の数値計算が可能かどうかも合わせて検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
実験計画が変更になったため。
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Research Products
(4 results)