2017 Fiscal Year Research-status Report
陸海統合3次元構造モデルに基づく東北沖における地震波再現性と地震発生場の研究
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16K05535
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡元 太郎 東京工業大学, 理学院, 助教 (40270920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 博士 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30253397)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地震波トモグラフィー / 差分法 / GPU / FDM |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度からの継続として構造モデル改良の試行を進めた。対象領域は東北沖として、陸海統合3次元構造モデルを用いたHOT-FDMシミュレーションにより対象領域の地震波応答を計算した。この計算には東工大のスーパーコンピュータであるTSUBAME-2.5およびTSUBAME-3.0のGPUを利用した。今年度は観測データをもとにして、我々が提案したFAMT(First-motion Augmented Moment Tensor)解析を用いて最適震源パラメータを決定した地震について、観測波形のフーリエスペクトルをデータとした逆問題解析を試行した。これらの地震からの波形については、周期およそ10秒以上では計算波形と観測波形との一致は良好であるが、周期10秒以下では計算波形と観測波形との残差が増大して一致が悪くなることが観察された。そこでフーリエスペクトルとしては前述の帯域をカバーするように0.0244Hz(周期40.96秒)から0.535Hz(周期1.87秒)までの210点の周波数成分を対象とした。これらの各周波数に対応する構造モデルのうちの剛性率に関するアジョイントカーネル(感度カーネル)を上記の地震波シミュレーションにより生成して、構造モデル改良のための逆問題解析を1観測点(3成分波形)場合について試行した。その結果、地震波経路に沿った領域では浅い部分で全体的に負の改善量が得られ、この改善量を用いてフーリエスペクトルを改良すると初期モデルよりもスペクトルがある程度改善される(観測スペクトルに近づく)ことなどが見出された。この結果から、観測点数や地震数を増やしていくことで構造モデル改良が進められる見通しが得られた。また、上のようにして生成したアジョイントカーネルに関する考察について論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は多数のスペクトル成分に関するアジョイントカーネルの作成や、それらの多数のカーネルを利用して複数波形のスペクトル成分をデータとできるように逆問題演算プログラムを拡張できた。そして、現実の観測データを用いた試行的な逆問題解析により、今後の構造モデル改良への見通しも得られた。また、このようにして生成したアジョイントカーネルに関する論文も投稿できた。これらの点からおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、観測点・震源ペアを増やすために、まず各観測点に関するアジョイントカーネル生成のための大規模シミュレーションを多数、実施する。同時に、M6程度の中規模地震をいくつか選んで、FAMT解析により現行の3次元構造モデルのもとでの最適震源パラメータを決定する。そして、これらのデータとカーネルの組み合わせにより、改良構造モデルを得ることを目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)今年度は、新たに観測波形をデータとして利用したことから、前年度よりも周波数成分を増大させ複数波形を利用できるような形に拡張したうえで、まず1観測点・1地震ペアの試行的な解析をもとにした検討を実施することとした。そのため、予算の一部を次年度に利用することとした。
(使用計画)観測点と地震を増やすためには、各観測点を対象とした大規模シミュレーションを繰り返す必要がある。そのような大規模計算と計算結果を保存するためのディスク利用料金、および逆問題解析のための費用として使用する。
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