2018 Fiscal Year Research-status Report
継続時間を考慮した西南日本のスロースリップイベント観測解析手法の開発
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16K05536
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 卓也 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90370808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松澤 孝紀 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波火山ネットワークセンター, 主任研究員 (90500744)
木村 武志 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波火山ネットワークセンター, 主任研究員 (10563520)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地殻変動 / SSE |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はSSEと深部低周波微動の関係を詳しく調べるため、2通りのアプローチでGNSSデータの解析をすすめた。 第一のアプローチは、先行研究により北米カスケード地域などで有効性が示された深部低周波地震データを基にGNSSデータをスタッキングする手法である。微動と短期的SSEが完全に同期していると仮定し、その日に発生した微動の総エネルギーがある閾値を超えたGNSSの日座標値差を足し合わせることによって、2004年4月-2009年12月のSSEに伴う総変位量を計算した。閾値を5×10^5 Jとした時のGNSSの総変位量は傾斜計データから推定されたSSEの断層モデルから期待される総変位量よりもはるかに大きく、四国中部や四国東部でその影響が顕著であった。よって、本手法により地殻変動データだけでは検出できない微小なSSEに伴う変位が検出できることが示された。本手法では、個々の短期的SSEは検出できないが、SSEの特性を解明するための重要な知見を与えてくれることが期待される。 第二のアプローチは、GNSS等による地殻変動の連続時系列データから断層のすべりの時空間変化を推定する手法である改良型のネットワークインバージョンフィルター(モンテカルロ混合カルマンフィルタ)を用いた手法である。この手法を、1996年から2010年までの東海地方のGNSS時系列データに適用し、プレート境界で発生するスロースリップイベント(SSE)の時空間変化を推定した。その結果、MCMKFの優位性を活かして、浜名湖直下の長期的SSEと小規模な短期的SSEが同時に推定され、両者のすべりの時空間発展が推定できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H30年度は、台風などによる想定外の観測点の故障により、本研究における重点的な観測対象地域である紀伊水道周辺の2か所のGNSS観測点でのデータが得られなくなり、復旧に時間と労力がとられたため、この地域のデータを用いた研究と傾斜計とGNSSデータを併合処理した研究は予定より遅れることととなった。しかしながら、研究実績の概要に記したとおり、研究開始当初は予定していなかった新たなアプローチでの研究を進めており、SSEの発生様式の地域性を調べるという当初の目的は達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を1年延長し、傾斜計とGNSSデータの併合処理による短期的SSE検出手法を完成させるとともに、GNSSデータを用いた短期的SSE検出手法の改良についても、観測点変位時系列の相関を用いた手法など複数の手法を南海トラフ沿いのGNSSデータに適用して、従来の手法との比較を行い、最適なSSE検出手法の確立を行う。さらに、GNSS観測が開始された1996年以降のSSE発生履歴と南海トラフ沿いの地域性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成30年度においては、台風21号による観測点停止の影響で当初予定してた研究が進まず、成果発表のための学会参加を取りやめたため、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、主に国際学会での成果発表を行うための旅費及び参加費として使用する予定である。
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