2018 Fiscal Year Research-status Report
ミッシングな誘発スローイベント検出によるプレート境界に関する物理状態の解明
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16K05537
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮澤 理稔 京都大学, 防災研究所, 准教授 (80402931)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 粒子フィルタ・スムーザ / 超低周波地震 / 動的誘発 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに本プロジェクトで開発した粒子フィルタ・スムーザによる、微小シグナルの検出手法の精度検証を行った。表面波を仮定した周期20秒の単調な波形の中に、超低周波を仮定した周期帯がほぼ同じでありながらも振幅が4桁程度小さいシグナルが記録されていても、これを検出可能であることが確かめられ、また検出能力はノイズレベルにもよる事が明らかになった。これを踏まえ、ボアホールアレイであるKiK-netで観測された2016年4月1日三重県沖の地震(M6.5)の記録を解析し、表面波によって誘発されたかもしれない超低周波地震の検出を試みた。なお解析に適した表面波がボアホールアレイで観測されているという条件を満たす地震は、これまでのところこの地震のみである。また大型並列計算機を用いることで、解析の高速化を図った。この結果、四国において、三重県沖の地震に伴う表面波の到来にあわせて超低周波地震が6回誘発されていたことを発見した。これらはこれまでに超低周波地震が発生していた領域だけでなく、微動発生域の浅部においても見られた。規模はおおよそM4前後であり、通常活動している超低周波地震よりもややマグニチュードが大きく、微動の誘発時に見られた特徴と似ている事が分かった。誘発されるタイミングや誘発過程については、超低周波地震のメカニズムを仮定してしまっていることと、震源時間関数が長いことにより、厳密な議論が行えなかった。これまでの研究成果と合わせると、この発見によって、広帯域に亘る全ての種類のスロー地震が、表面波という動的な応力場欄によって誘発される事が確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開発手法の精度検証を行うところまでは、概ね予定通りであった。しかし、実際の記録を解析する際に、予想以上の計算量が必要とされることが試みの計算から明らかとなり、また用いることの出来る計算機資源が限られている。このため、安定的な解を得るためのパラメータチューニングの作業と、最終的な解を得るための計算に予想を大幅に超える時間がかかってしまい、結果として、進捗状況は研究計画を立てた当初の予定より遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
超低周波の動的誘発を発見した初めてのケースであるので、この結果を更に吟味する必要がある。特に震源メカニズムや、発生場所について、他のスロー地震や通常の地震などと言った地殻活動との関係性を解明していく。更に他の地震記録に対しても解析を試みて、動的誘発現象の検出を行っていく。開発した粒子フィルタ・スムージングは汎用性が高いため、他の地震現象の解析に対してもその応用も探っていく。
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Causes of Carryover |
実データを解析する計算時間が、大型並列計算機を用いる等の工夫を行っても、研究計画立案当初の予想を大幅に上回ってかかることが判明し、結果の考察や関連する研究結果の学術大会等での講演発表、他記録の解析等が後ろ倒しになってしまったため。
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Research Products
(1 results)