2016 Fiscal Year Research-status Report
3次元的に分布させたモーメントテンソルによる次世代震源過程解析手法の開発
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16K05539
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
深畑 幸俊 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10313206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 勇治 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50370713)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熊本地震 / 弱非線形インバージョン / 地震すべり分布 / InSAR |
Outline of Annual Research Achievements |
モーメントテンソルを3次元的に分布させて地震による地殻変動場をインバージョン解析し、体積的な内部力源(地震すべり)の分布を推定することが本研究の主目的であるが、そのような体積的なぼんやりとしたイメージと比較する対象が既存の断層面を設定した地震すべりインバージョンである。 2016年度は4月に熊本地震という明確に二つの異なる断層(日奈久断層および布田川断層)で同時に地震すべりが生じるという、かなり稀な予期せぬ出来事が発生した。熊本地震の発生を受けて、そのInSAR(干渉SAR)データから、これまでに行われていた単一の断層面を仮定した地震すべりインバージョン(Fukahata & Wright, 2008, GJI)を、複数の断層面を持つ場合に対しても有効なように定式化を拡張し、解析を実行した(Fukahata & Hashimoto, 2016, EPS)。明確な地震断層が現れた場合に地震すべりインバージョンの非線形性が弱くなることに着目した方法で、推定の難しい断層面の傾斜角についてはインバージョン解析の結果客観的に求まるよう工夫されている。得られた地震のすべり分布は、日奈久断層ではほぼ純粋な横ずれで、最大すべり量は約2.5 m、布田川断層では、横ずれに加え顕著な正断層成分を含み、最大すべり量は5 m を越えることが推定された。また、大きな被害のあった阿蘇カルデラ西縁で、局所的にすべり量が大きくなっていることが分かった。 このように研究初年度は、熊本地震の発生を受け、既存の方法を拡張してその有効性を実証し、体積的な表現と比較するための準備を進めた。加えて、インバージョン解析において直接的先験拘束条件と間接的先験拘束条件を合成する際に、しばしば確率密度関数の表現が非常に複雑で使いにくいものになってしまうという問題があったが、それを解決するための基本的なアイデアを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年熊本地震という予期せぬ出来事の発生を受け、体積的な内部力源(地震すべり)の分布の推定という本研究の主目的に直接アプローチする代わりに、既存の弱非線形インバージョン解析手法の複数断層への拡張を行い、解析結果を論文として発表した(Fukahata & Hashimoto, 2016, EPS)。さらに、直接的先験拘束条件と間接的先験拘束条件を併せて用いると、しばしば確率密度関数の形が非常に複雑になってしまいうまく解けなくなるという問題があったが、それを回避するアイデアを得ることができた。この発見は、他分野において同様の数学的構造を持つ問題にも応用が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度にも用いた熊本地震のInSARデータの解析を行う。まずは、地震波の解析から得られたモーメントテンソル(Yagi et al., 2016, EPS)を直接的先験拘束条件として利用して、断層トレースを与えた上で、弱非線形インバージョン解析を行う。この解析により、より良いすべり分布が得られることが期待されると同時に、モーメントテンソルの取り扱いに習熟することができる。次いで、震源域を細かなブロックに分割して体積的にモーメントテンソルを分布させ、InSARデータをインバージョン解析することによりその各成分の大きさを推定する。その際、まずは地震によるモーメント解放分布が時空間的に滑らかであるというシンプルな拘束条件の下で定式化を行い、解析プログラムを作成する。
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Causes of Carryover |
熊本地震の発生による計画の変更を受け、2016年度における計算量はさほど大規模なものとはならなかった。加えて、2017年度に本研究に協力するポスドクを1名時間雇用する可能性があったため、なるべく多額の科研費を今年度に繰り越した方が良いと判断し、データ解析用ワークステーションの購入を先送りした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度の後半に1名ポスドクを時間雇用する予定であるためその費用を拠出すると共に、当初予定から多少減額してデータ解析用ワークステーションの購入を行う予定である。
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