2017 Fiscal Year Research-status Report
発生初期における巻雲の氷晶発生・成長機構解明に関する実験的研究
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16K05558
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
折笠 成宏 気象庁気象研究所, その他部局等, その他 (50354486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田尻 拓也 気象庁気象研究所, 予報研究部, 主任研究官 (40414510)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 氷晶発生機構 / 巻雲の微物理特性 / 詳細雲微物理ボックスモデル / 雲生成チェンバー / 氷晶核 / 雲核 |
Outline of Annual Research Achievements |
氷晶核形成モードおよび環境条件の違いによる巻雲内氷晶の生成・成長機構を解明するため、発生初期における巻雲の微物理特性を雲生成チェンバー等により再現し、詳細雲微物理ボックスモデルによる定式化改良への反映に取り組む基礎的研究を実施している。 実大気中に存在するエアロゾルは多種多様であり時空間的に変動も大きく、特に巻雲は他の雲種と比較して低温域・高々度かつ広領域にて出現するため、自然の巻雲内で働く氷晶発生機構は観測が困難なことから未解明の部分が現在でも多く、発生環境の違いによるインパクトも大きいと指摘されている。 地上観測モニタリングシステムを用いて、各種エアロゾルのほか実大気エアロゾルの雲核能・氷晶核能に関するデータ取得を通年で継続し詳細な解析を進めた。氷晶核の計測は、一般に数濃度が低く測定が困難であり、粒径依存性もあることから、インパクターのカットオフ径を変更した場合の氷晶核能を調べるデータ取得も行った。地上でのモニタリング観測結果からは、氷晶核数濃度は年々変動が大きいものの5-6月頃に極大になる傾向が見られ、一つの要因として自然起源のダスト粒子の寄与が考えられる。 人為起源の代表的エアロゾルである金属酸化物を例として、雲生成チェンバー実験等により雲核能・氷晶核能を調べて定式化改良を行った。氷晶核計によるデータ解析によれば、酸化鉄は-35℃、酸化アルミニウムは-30℃から氷晶核として働くシグナルが検出された。雲生成チェンバー実験の結果では10℃以上高温で氷晶発生を計測し始め、この差異は計測方法に固有である活性時間の違いが原因の一つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、種々のダスト粒子、人工氷晶核、吸湿性粒子における氷晶核能・雲核能の単独での特性を把握した上で、混合した場合の特性を調べることが目的の一つである。雲生成チェンバーによる実験は、二年目で起きた冷凍機故障からの復旧作業中であり、室内実験と数値実験による結果の比較検討はやや遅れている。三年目の計画の早い段階で復旧させる予定であるが、地上モニタリング観測システムを用いた各種エアロゾルの特性調査や詳細雲微物理ボックスモデルによる雲粒・氷晶発生の予備実験のほうを中心に進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行ってきた室内実験から得られる知見のほか、最新の先行研究も参考にしつつ、代表的な巻雲の設定(エアロゾル種や環境条件)の違いが氷晶発生機構へ与える影響の観点から、雲生成チェンバー実験および詳細雲微物理ボックスモデルを用いた数値実験を比較検証し、現時点での雲粒・氷晶発生の定式化に基づいた再現性を議論する。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初、点検校正の対象であった測定器が故障したためと、実験消耗品に変更が生じたため。 (使用計画) 別の測定器の使用料と実験消耗品の一部に充てる。
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